解体・リフォーム・改修事業者ためのアスベスト情報サイト

解体・リフォーム・改修事業者ためのアスベスト情報ナビ

アスベスト作業時の防じんマスク選びとは?作業従事者が守るべき保護具の基準と運用

  • 最終更新日:

アスベスト(石綿)を取り扱う作業では、適切な保護具の着用が作業者の健康を守る最前線となります。
中でも、防じんマスクは吸引によるアスベスト繊維のばく露を防ぐうえで、最も基本かつ重要な装備です。

しかし、すべてのマスクがアスベスト作業に適しているわけではなく、作業環境や粉じん濃度に応じて、法令で定められた性能基準を満たすマスク正しく選定しなければなりません。
選定を誤れば、重大な健康被害につながる恐れがあります。

本記事では、防じんマスク区分用途の違い正しい選び方着用時の注意点、さらにフィットテストの実施義務管理ルールについて解説します。
安全性と法令遵守を両立するために、作業従事者・元請業者ともに正しい知識を持つことが求められています。

なぜアスベスト作業では専用マスクが必要なのか?その根拠と重要性

アスベスト作業において、防じんマスクの着用は作業者の健康を守るために不可欠な対策です。

アスベスト繊維は非常に細かく、目に見えないサイズで空気中に浮遊しやすいため、吸い込むと肺に沈着しやすく、石綿肺中皮腫肺がんなどの深刻な健康被害を引き起こすおそれがあります。
そのため、日本では労働安全衛生法に基づき、石綿障害予防規則(石綿則)において作業従事者に対し、適切な呼吸用保護具の着用が義務付けられています。

厚生労働省は、アスベストを取り扱う作業に従事する者には、国家検定に合格した防じんマスクを使用するよう明確に指導しており、
一般的なマスクや簡易型防じんマスクでは必要な防護性能を満たせないとされています。
そのため、作業環境に適した規格の防じんマスクを正しく選定し、適切に着用・管理することが作業者の安全を確保する上で重要です。

特に、除去作業や解体作業では粉じんが大量に発生するため、事前のリスク評価とマスク選定の正確さが極めて重要です。
使用するマスクは、作業内容粉じん濃度に応じて最適な性能レベルのものを選ぶ必要があり、その選定ミスは作業者の健康を直接脅かす結果につながりかねません。

また、正しく装着されていない場合には十分な保護効果が得られないため、石綿作業主任者の立会いのもと着用訓練フィットテストを通じて、作業者全員が確実に使用できる状態を保つことが求められます。
防じんマスクの使用は単なる形式的な対応ではなく、作業者の命を守るための根幹をなす措置であるという認識が、すべての現場で共有されるべきです。

防じんマスクの種類(RS1~RS3/RL1~RL3)の違いと用途

呼吸用保護具は、大きく分けて、ろ過式給気式の2種類があります。
ろ過式の呼吸用保護具のうち、防じんマスクと電動ファン付き呼吸用保護具については厚生労働省告示による規格があり、国家検定を受けなければなりません。

防じんマスクには、ろ過効率や使用環境に応じた分類がなされています。
労働省の定める「区分記号」によって、マスクは大きく「RS(固体粒子対応)」「RL(固体・液体粒子対応)」の2種類に分類され、それぞれろ過性能によって1から3までの等級があります。
RS1、RS2、RS3は、アスベストを含む固体粒子に対応する防じんマスクで、数字が大きくなるほど高性能となります。
RS1は最低限の性能、RS3は最も高いろ過効率を示します。

RL1、RL2、RL3も同様に、固体粒子に加え液体粒子(ミストなど)にも対応しており、RL3が最も高性能です。
アスベスト作業では通常、RS2以上またはRL2以上が推奨されています。
これらの区分は、厚生労働省のガイドラインに基づき、作業環境のリスク評価に応じて選定されます。
選択を誤ると、健康被害のリスクを高めるため、正しい知識と判断が不可欠です。
防じんマスクの選定は、単に等級の高いものを選べばよいというわけではなく、作業内容や作業時間、作業者の体力やフィット感も考慮しなければなりません。

たとえば、RS3やRL3は非常に高いろ過性能を持ちますが、その分呼吸抵抗も大きくなる傾向があり、長時間の着用では作業者に負担がかかることもあります。
そのため、作業時間が短い場合や、粉じん濃度が比較的低い作業であれば、RS2またはRL2を選定することで防護性能と作業性のバランスをとることができます。

また、防じんマスクには使い捨てタイプのほか、交換式フィルターを使用する半面形・全面形マスクもあり、作業環境や頻度に応じた使い分けが重要です。
とりわけ、アスベスト除去のような継続的な作業を行う現場では、フィルター交換式の高性能マスクの方が経済的かつ衛生的であるとされています。

選定に際しては、厚生労働省・環境省が提供する建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルを参照し、
作業リスクに見合ったマスクを選ぶとともに、現場責任者や石綿作業主任者がその使用を指導・管理する体制を整えることが不可欠です。
正しいマスクの選定と運用が、作業者の命を守る第一歩となります。

 

作業環境や飛散レベルに応じた防じんマスクの選び方

防じんマスクの選定にあたっては、作業環境のアスベスト粉じん濃度換気状況作業の性質(解体・除去・封じ込めなど)を総合的に評価しなければなりません。

たとえば、封じ込め作業や隔離空間での除去作業など、レベル1のアスベストで高濃度の粉じんが発生する環境では、
電動ファン付き呼吸用保護具またはこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器酸素呼吸器もしくは送気マスク高性能マスクの使用が求められます。

隔離空間外でアスベスト含有成型品等の除去作業を行う作業場所で、アスベスト等の除去等以外の作業を行う場合には、取り換え式防じんマスクまたは使い捨て式防じんマスクを使用する必要があります。

また、作業者が複数人で作業する場合や長時間にわたる作業がある場合には、より呼吸抵抗の低い設計のマスクを選ぶことで、快適性を保ちつつ高い防護性能を維持することが可能です。
作業計画書には、使用するマスクの種類とその根拠(粉じん濃度や環境条件)を明示し、適正な保護具の選定がなされたことを示す必要があります。

厚生労働省・環境省の「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」では、
作業レベルに応じたマスクの選定指針が示されており、これを基に現場に即した判断を行うことが重要です。

防じんマスクのフィットテストの実施と着用の注意点

防じんマスクの効果を最大限に発揮させるためには、顔面とマスクの密着性が確保されていることが前提条件となります。

フィットテストには、定量的な測定(計器を使って漏れ率を評価)と定性的な方法(嗅覚や味覚を使って漏れを判定)があります。
2023年4月より、アスベスト除去作業などの特定の作業においては、フィットテストの実施が義務化されており、作業者ごとの結果を記録・保管する必要があります。
フィットテストに合格していないマスクでは、たとえ規格に適合していても十分な保護性能を発揮できません。

また、着用時には髭の有無や顔の大きさ・形状によって密着性が変わるため、個々の作業者に合わせたマスク選びと正しい装着指導が必要です。
マスクの漏れがある状態で作業を行うことは、健康被害に直結する重大な問題となります。

防じんマスク使用中の交換頻度と保管管理の基本ルール

防じんマスクは使い捨てタイプ(ディスポーザブル)と再使用可能なタイプ(取替え式)に分かれており、それぞれ使用期間や交換基準が異なります。

使い捨てタイプは原則として一日使い切りで交換が必要です。
再使用型の場合でも、フィルターの目詰まりや吸気抵抗の上昇が確認された時点で速やかに交換する必要があります。

また、マスクの保管環境も性能維持に大きく関わります。
湿度や直射日光を避け、密閉できる清潔な容器などに保管することが推奨されています。
マスクの劣化や変形が見られた場合は、未使用であっても使用を避けるべきです。

使用後のマスクは、アスベスト粉じんが付着している可能性があるため、適切な方法で清掃・廃棄しなければなりません。
現場では保管用のケースや廃棄用の密閉袋を用意し、衛生管理を徹底することが重要です。

アスベストONEで書類作成と進捗管理をワンストップで効率化

「アスベストONE」は、アスベスト(石綿)に関する書類作成と進捗管理をワンストップで支援するクラウドサービスです。

必要な情報を項目に沿って入力すれば、事前調査報告書・作業計画書・現場掲示用の看板PDFなどを自動生成。
同じ内容を何度も入力する必要がないため、書類作成の手間を大幅に削減できます。

また、GビズIDによる電子報告にも対応しており、CSV形式で出力したデータをアップロードするだけで、煩雑な手入力作業を省き、スムーズな報告が可能です。

工事情報はクラウド上で一元管理できるため、社内だけでなく、下請け業者や協力会社との情報共有もスムーズに行えます。
全体の工程を明確に把握しながら、法令に沿った対応を効率的に進めることができます。

初めての方でも安心して運用いただけるよう、アスベスト対応に関するご相談も随時承っております。
EMSでは、現場に即した実務の視点から、法令に沿った対応方法をわかりやすくご案内し、皆さまの業務負担の軽減と、確実な法令対応をしっかりとサポートいたします。

この記事に関連する記事