断熱材にもアスベスト?見逃しやすい建材と施工年代ごとのリスク
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アスベスト含有の断熱材とは?使用されていた時代と製品例
アスベストは、その耐熱性や断熱性、防音性に優れる特性から、1950年代から1980年代にかけてさまざまな断熱材に使用されていました。
特に、鉄骨建築やボイラー設備、ダクト、煙突、天井裏などで使用された吹付け断熱材や保温材にアスベストが多く含まれていることで知られています。代表的な製品としては、「ロックウール吹付け材」や「アスベスト含有けい酸カルシウム板(カルシウムシリケートボード)」などが挙げられます。
また、スレート板やパーライト断熱材にもアスベストが含有されているケースがあります。
アスベストの使用は徐々に規制が進み、1990年代以降には使用が大幅に制限され、2006年には原則全面禁止となりましたが、2006年以前に建築された建物には未だに残存している可能性があり、改修や解体時には注意が必要です。
目視での判断が難しい場合も多く、専門調査による確認が不可欠です。
外観ではわからない断熱材のアスベスト見分け方
断熱材にアスベストが含まれているかどうかは、外観だけでは判断できないケースが非常に多くあります。
アスベスト含有の断熱材と非含有の製品は見た目が酷似しており、色や質感だけで区別することは困難です。
そのため、最も確実な見分け方は、専門のアスベスト調査を実施することです。
まずは建物の築年数を確認しましょう。
一般的に、1950年代から1980年代後半までの建築物にはアスベスト含有建材が使われている可能性が高く、特に1980年以前の建物は要注意とされています。
断熱材が使われている場所(天井裏、煙突など)を重点的に調査する必要があります。
次のステップとして、専門業者による現地調査が行われます。
この際、建材の一部を慎重に採取し、認可を受けた分析機関で定性・定量分析を実施します。
なお、見た目ではアスベストが含まれていないように見えても、微量でも含有されていれば飛散リスクがあります。
特に劣化・損傷した断熱材は、繊維が空気中に放出されやすく危険です。
自己判断で撤去や破壊を行うのは極めて危険であり、必ず専門知識を持った業者に調査と対応を依頼しましょう。
このように、断熱材におけるアスベストの見極めには、年代・場所・材質に基づく調査と科学的な分析が不可欠です。
安全と法令遵守のためにも、適切な手順に則った確認が求められます。
アスベスト含有建物の解体・改修前に必要な調査と分析のステップ
建築物の解体や改修を行う際、アスベスト(石綿)の有無を事前に調査することは法律で義務付けられており、適切な対応を怠ると作業員や周囲の住民に健康被害をもたらす恐れがあります。
特に断熱材は外観での判別が難しく、見落とされやすいため、十分な調査と分析が必要です。
まず初めに行うのが「書類調査(書面調査)」です。建築当時の設計図書や仕様書、施工年、使用建材の種類などを確認し、アスベストが使用されている可能性を見極めます。
次に、実際の建物を専門家が目視確認し、アスベスト含有が疑われる断熱材や仕上げ材を特定します。
その後、「試料採取(サンプリング)」を行い、建材の一部を安全に採取して専門機関へ送付します。
分析は、偏光顕微鏡(PLM)やX線回折装置(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて実施され、アスベストの含有有無、種類(クリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど)、含有量などが明らかになります。
分析結果に基づき、除去が必要かどうかを判断し、必要な場合は「アスベスト除去工事」の計画を立てます。
この工事も専門業者が行い、作業前には自治体への届け出や周辺住民への通知、飛散防止対策の徹底が求められます。
このように、事前調査から分析、除去の判断までのプロセスは、法律(大気汚染防止法、労働安全衛生法、石綿障害予防規則など)に基づいて厳格に管理されています。
適切な調査を行わないまま作業を開始すると、法令違反となり、事業者には行政指導や罰則が科される可能性があります。
安全かつ確実に工事を進めるためには、信頼できる調査機関・施工業者への依頼が不可欠です。
アスベスト含有の断熱材の安全な除去作業及び処分方法
アスベストを含む断熱材は、その飛散性の高さからいわゆるレベル2のアスベスト含有建材に分類されており、除去作業を行う場合には安全かつ法令に則った作業を行うことが義務付けられています。
アスベスト繊維は非常に細かく、空気中に飛散すると吸引によって肺がんや中皮腫などの健康被害を引き起こすおそれがあるため、作業は慎重に行う必要があります。
まず、アスベスト含有が確認された断熱材を取り扱う場合、作業区域を厳重に区画し、飛散防止のための負圧隔離(作業場をプラスチックシート等を用いて作業場所を密閉状態にし、かつ集じん・排気装置を用いて作業場内を作業場外に対して負圧にすること)や湿潤化(散水による粉じん抑制)を徹底します。
この作業は、石綿作業主任者などの有資格者が管理し、作業員もアスベスト対応の保護衣・防じんマスクを着用するなどの対策が必須です。
除去した断熱材は、特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」に該当するため廃棄物処理法において厳重な管理が求められます。
保管時~引き渡し時においては、飛散防止のために二重のポリエチレン袋や専用容器に密封し、「廃石綿等」と明記します。
その後、都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者が、安全に収集・運搬します。
最終的には、アスベストを埋立可能な許可済みの管理型最終処分場で処理するほか、溶融、無害化などの処理が行われる場合もあります。
また、アスベスト含有断熱材を含め、レベル1(吹き付け材等)やレベル2(断熱材・保温材等)に該当するアスベストの除去等を行う場合は、特定粉じん排出等作業実施届出書や建設工事計画届の提出が必要になります。
作業完了後には、除去報告書や廃棄証明などの記録を保存し、トレーサビリティを確保します。
違法な処理や不適切な廃棄は、労働安全衛生法、大気汚染防止法や廃棄物処理法に違反し、事業者に対して厳しい罰則が科される可能性があります。
アスベスト含有断熱材の除去には、専門知識と適切な設備、法的手続きが不可欠です。
安全を確保するためには、有資格者を擁する専門業者に依頼し、自治体や関係機関と連携しながら慎重に対応することが求められます。
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