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築50年の木造住宅にアスベストは使われている?調査・リスク・除去の実務と注意点を徹底解説

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築50年を超える木造住宅は、日本全国に数多く現存しています。昭和中期(1945~1963年)に建築されたこれらの住宅は、
和風の趣や自然素材の使用による快適さで人気がありますが、老朽化や耐震性の問題から、近年ではリフォームや建て替えを検討するケースが増えています。

そのようなタイミングで発注者として必ず確認しておきたいのが「アスベストの有無」です。

アスベスト(石綿)は、かつて耐火性や断熱性に優れる建材として重宝されていましたが、その繊維を吸い込むことで肺がんや中皮腫といった重篤な疾患を引き起こすことが明らかとなり、現在では製造・使用ともに全面禁止となっています。

しかし、法規制が整備される以前に建てられた築50年程度の住宅では、いまだにアスベストを含む建材が使用されている可能性が残っています。

本記事では、築50年前後の木造住宅におけるアスベストの使用実態、含有が想定される部位、調査・分析方法、除去や処分の流れ、関連する法令と報告義務まで、最新の法令・指針に基づいて正確に解説します。

築50年の木造住宅にアスベストは使われているのか?

1970年代半ばに建築された木造住宅には、アスベストが建材の一部として使用されていた可能性があります。
当時は成形板、接着剤、床材、仕上塗材、など、住宅のさまざまな部位にアスベスト含有建材が利用されていました。

特に以下の部材・仕上げ材には注意が必要です。

  • 押入れの天井や壁に使われた石膏ボード
  • 軒裏や外壁下地に使われたスレートボード
  • 浴室の天井や壁面に用いられたケイ酸カルシウム板第一種
  • 和室等の塗り壁として用いられた聚楽壁
  • 接着剤や、下地処理材に含まれるアスベスト含有パテ・モルタル

木造住宅であっても、内装・外装の仕上げ材にセメント系や断熱系の部材が用いられていれば、石綿の使用は珍しくありません。
鉄筋コンクリート造だけでなく、木造でも「混構造」や「部分改修」によってアスベスト含有建材が取り入れられている場合があるため、築年数だけで判断するのは危険です。

築50年の住宅に使われたアスベストの種類と特徴

日本国内で一般住宅に多く使用されたアスベストには、クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)の3種類があります。
このうち、住宅で使用された主な石綿はクリソタイルで、スレートボードやケイ酸カルシウム板などの建材に多く含まれていました。

アスベストの危険性は、含有量や封じ込め状態によって異なります。
たとえば、硬く圧縮された成型板の中の石綿は飛散リスクが低いですが、吹付け石綿や表面が劣化した断熱材などは、微細な繊維が空気中に浮遊しやすく、吸入による健康被害のリスクが非常に高くなります。

そのため、目視だけで「危険」「安全」と判断することはできず、確定的な判断には専門的な分析が必要です。

アスベストの有無を確認するにはどうすればいいか?

アスベスト含有の有無を確実に調べるには、「建築物石綿含有建材調査者」の有資格者による事前調査と、分析機関によるJIS A 1481に準拠した定性分析が必要です。

まず、建築図面竣工図施工記録確認し、石綿含有の疑いがある部材を特定します。
次に、調査者が現地で目視確認を行い、必要に応じてサンプルを採取します。
採取された試料は専用の封入容器に入れて分析機関へ送付され、X線回折(XRD)や偏光顕微鏡(PLM)による分析が行われます。

一般的に、1箇所あたりの分析費用は30,000円程度で、複数箇所を調査する場合は10万円を超えることもあります。

発注者は調査費用の見積もりを確認し、信頼できる業者に依頼することが重要です。

アスベストが見つかった場合の対応と除去フロー

調査の結果、アスベストが含まれていることが判明した場合、施工に際しては除去等の対策を行う必要があります。

除去等作業は「石綿作業主任者」が現場管理を行い、作業員は特別教育を受講していなければなりません。

作業中は飛散防止のため、湿潤化、密閉、隔離養生といった対策が実施されます。
除去されたアスベスト含有建材は「石綿含有産業廃棄物」として、収集・運搬・処分まで厳密に管理されます。

除去費用の目安は、軒裏や外壁スレートの場合で1㎡あたり1.5万〜3万円前後です。
内装材であればそれより安くなるケースもありますが、仮設工事費・廃棄費・分析費などを含めると、住宅全体で数十万円〜100万円を超える場合もあります。

法令と行政への報告義務

アスベストに関する主要な法令は以下のとおりです。

  • 大気汚染防止法(環境中へのアスベスト粉じん飛散防止)
  • 労働安全衛生法石綿障害予防規則(作業環境の保護、作業者の安全対策)
  • 廃棄物処理法(石綿含有廃棄物の処理)

これらの法令に基づき、解体や改修を行う場合には、発注者として元請業者が法令に定められた事前調査・飛散防止対策・届出等を行う際の協力が義務づけられています。

特に届出については、レベル1~3すべての工事で、一定規模以上の工事における事前調査結果報告が義務付けられています。
さらに、レベル1・2の除去工事では、工事開始の14日前までに大気汚染防止法に基づく作業実施届出(義務者:元請業者)、着工14日前までに石綿障害予防規則に基づく工事計画届出(義務者:発注者)が追加で必要となります。

届出を怠ったり虚偽の報告を行った場合は、30万円以下の罰金行政処分の対象となります。
さらに、作業中にアスベストを飛散させて周辺住民に健康被害が発生した場合、民事上の損害賠償責任が発生する可能性もあるため注意が必要です。

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