アスベスト事前調査の報告義務の対象と不要なケースとは|資格要件&罰則のポイント
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アスベスト事前調査の報告義務の対象となる工事と建物
報告義務の対象となるのは、すべての建築物の解体工事と、一定規模を超える改修・補修工事です。具体的には、解体で延べ面積が80平方メートル以上、改修や補修で請負金額が100万円を超える場合が該当します。これらの工事では、着工前に専門の調査者が現地確認を行い、電子システムを通じて結果を報告する必要があります。
調査は、資格を持つ「特定建築物石綿含有建材調査者」などが行います。設計図書や施工記録をもとに使用建材を確認し、必要に応じてサンプルを採取して分析します。特に2006年以前の建物では、吹付け材や保温材、ケイカル板、ビニル床タイルなどにアスベストが含まれていることがあるため、注意が必要です。
報告内容には、調査方法、建材の種類、分析結果などを記載し、工事開始前に労働基準監督署や自治体へ提出します。虚偽や未報告が発覚した場合、罰則の対象となることがあります。適正な報告を行うことで、工事現場や周辺環境の安全を確保できます。
建築物の規模に関係なく、老朽化した住宅や小規模な改修でもアスベストが残っている可能性があります。安全な工事を行うためには、まず事前調査の実施と正確な報告が欠かせません。調査を専門機関に依頼し、確実に確認しておくことが、健康被害を防ぐための最も効果的な手段です。
アスベスト事前調査や報告が不要となる工事と建物
2020年の大気汚染防止法改正により、2022年4月よりアスベストの事前調査およびその結果の報告義務が厳格化されました。しかし、すべての工事や建物がこの報告義務の対象となるわけではなく、一部には調査や報告が不要となるケースもあります。ここでは、その代表的な例と注意点を解説します。
【事前調査・報告が免除になるケース】
以下の条件に当てはまる工事の場合、事前調査の対象外となります。調査自体が不要なため、調査結果の報告も必要ありません。
- 木材・金属・石・ガラス等のみの建材や畳、電球など、あきらかな石綿不含有の材料のみの除去等かつ、施工時に周りの建材損傷も無い工事
- 釘を打つ、抜くなどの軽度の工事
※電動工具を使う場合は調査対象になる場合があります。 - 現存する材料等を損傷・除去せず、新たな材料を追加するのみの作業
例:既存の塗装の上に塗装、既存の床材の上に接着剤で新たな床材を張るだけ、など。
※ただし、高圧洗浄する場合や、既存の建材に劣化がある場合には調査対象になります。
【電子報告が免除になるケース】
工事の規模が小さい場合は報告が不要となります。具体的には以下の条件です。
- 解体工事:解体対象の床面積が80平方メートル未満
- 改修・補修工事:請負金額が100万円未満(税抜)
これらの小規模な工事については、法的に報告義務が免除されます。ただし、たとえ報告が不要でも、調査自体は行う必要があります。
なお、新築着工日が2006年9月1日以前である建築物に関しては、そのことが確認できた時点でアスベストの含有がない、と判断していいことになっていますが、建物の新築着工日を確認する事自体が事前調査であると判断されるため、調査結果記録を作成することはもちろんのこと、規模要件に該当する場合には電子報告も必要となります。
アスベスト事前調査には資格が必要
建築物のアスベスト事前調査に関しては、2023年10月から「石綿含有建材調査者」の資格を持つ者が調査を行うことが義務化されました。この資格を持たない者が単独で調査を行うことは認められていません。資格は「特定建築物石綿含有建材調査者」「一般建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者」の3種類に分かれており、対象となる建物の範囲が異なります。戸建て住宅の専有部分だけを対象とする場合は「一戸建て等」、工場や商業施設など幅広い建物に対応する場合は「一般建築物」または「特定建築物」の資格が必要です。
資格を取得するには、所定の講習を受講し、修了試験に合格することが求められます。建築関係の実務経験がある方は講習の受講が可能ですが、経験がない場合でも「石綿作業主任者」の資格を先に取得すれば受講資格を得ることができます。これにより、実務経験のない人でも将来的に調査業務に携わる道が開かれます。
なお、2025年以降は建築物だけでなく、発電設備などの工作物にも「工作物石綿事前調査者」という新たな資格が必要となる予定です。アスベスト調査の分野では、より専門的な知識と技術が求められる時代に移行しています。
安全な工事を実現するためには、有資格者が正確に調査を実施し、その結果を報告することが欠かせません。資格制度の目的は、作業者や周辺住民をアスベスト被害から守ることにあります。今後も、工事を行う際には必ず資格者による調査を依頼し、法令に沿った対応を徹底することが重要です。
アスベスト事前調査を怠った場合の罰則
建築物の解体や改修工事では、大気汚染防止法および労働安全衛生法に基づき、アスベストの有無を確認する事前調査を行う必要があります。調査結果は元請業者が報告する義務を負い、報告を怠った場合には「30万円以下の罰金」が科されます。これは故意でなくても適用され、たとえ「うっかり忘れた」場合でも免責されません。
さらに、アスベストが含まれる建材を除去する際には、封じ込めや飛散防止などの措置を講じることが求められます。これを怠った場合は「3か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となり、作業基準に違反した場合は「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。無資格者が調査を行ったり、虚偽の報告をした場合も同様に処罰の対象です。
また、法人としての責任も問われます。元請業者や下請業者が適切な調査体制を整えずに工事を進めた場合、会社全体が罰則を受けることがあります。現場管理を担当する「石綿作業主任者」などの責任者個人にも刑事責任が及ぶ場合があります。
建物所有者も例外ではありません。発注者として工事を依頼する際には、事前調査の実施を確認し、結果を施工業者に提供する義務があります。依頼した業者が調査を怠った場合でも、所有者が管理責任を問われるケースがあります。
このように、アスベスト事前調査を怠ることは罰金だけでなく、工事中止命令や信用失墜にもつながります。調査は「石綿含有建材調査者」などの有資格者が行う必要があり、メーカーの不含有証明を確認する行為自体も事前調査に該当し、その結果を報告しなければなりません。安全と法令遵守のためには、必ず専門の調査機関に依頼し、確実な報告体制を整えることが重要です。
アスベスト事前調査・報告の流れ
まず最初に行うのが書面調査です。設計図書や施工図、改修履歴、納品書などの資料を確認し、使用されている建材にアスベストが含まれている可能性があるかを調べます。特に2006年以前に建築された建物では、アスベスト含有建材が使われている可能性が高く、慎重な確認が必要です。書面が残っていない場合は、関係者への聞き取りも有効です。
次に目視調査を行います。現場に赴き、書面調査で確認した情報と実際の施工状況を照らし合わせます。建材の種類や位置、劣化の有無を確認し、アスベストが疑われる部分を特定します。建材名が不明な場合は、メーカーのカタログや不燃材料データベースを参照して判断しますが、判別できない場合は次の工程に進みます。
分析調査では、採取した建材を分析機関に送り、「JIS A1481-1」に基づく定性分析を実施します。これにより、アスベストが含まれているかを確実に判定します。なお、メーカーの不含有証明書で確認する行為自体も事前調査に該当し、その結果は報告対象となります。木材・ガラス・石など明らかに非含有の材料のみで構成されている場合を除き、調査・報告の義務は免除されません。
調査結果が確定したら、報告書の作成・提出を行います。元請業者が「石綿事前調査結果報告システム(厚生労働省)」を通じて提出し、発注者や関係業者に共有します。報告を怠った場合は罰則の対象となるため、期限内の提出が不可欠です。
このように、アスベスト事前調査は書面→現地→分析→報告の順に進められ、すべての工程で有資格者による確認が必要です。安全で適正な工事を行うためにも、信頼できる調査機関へ依頼し、法令に基づいた正確な報告を行うことが大切です。
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