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アスベスト調査義務化の全容解説|背景・罰則・法改正の流れと実務手順

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アスベスト調査は従来から義務、2022年は報告制度が義務化

アスベストはその耐久性や断熱性の高さから長年建材として利用されてきましたが、健康被害が深刻化したことを受け、法規制が段階的に強化されてきました。建築物の解体や改修におけるアスベスト調査は従来から義務とされており、工事を開始する前に必ず含有の有無を確認しなければなりません。

この調査を怠ると、作業者や周辺住民が石綿粉じんに曝露する危険があり、厳格な規制が設けられてきた背景があります。大きな転換点となったのが2022年4月からの制度改正です。

それまで「調査の実施義務」は存在していたものの、結果の提出は求められていませんでした。しかしこの改正によって、調査を行った上で、その結果を管轄する自治体や労働基準監督署へ報告することが新たに義務付けられました。

この制度強化の狙いは、調査の実効性を高め、現場での不適切な施工を防ぐことにあります。従来は調査を実施しても、その正確性を行政が確認する事もなく、その結果が適切に扱われないまま工事が進むケースもありました。報告制度の導入により、行政が調査内容を把握するとともに、必要に応じて聞き取りや現場への立ち入りを行うことができるようになり、管理体制が大幅に強化されました。

加えて、2023年10月以降は有資格者による調査が義務化され、信頼性の担保が図られています。これにより、専門知識を持つ調査者が現場を確認し、精度の高い判断を下すことが求められるようになりました。

アスベスト調査は、従来から工事に欠かせない重要なプロセスであり、2022年の報告義務化によって法的拘束力が一層強まりました。関係者は最新の規制を正しく理解し、適切な調査と報告を行うことが、法令遵守だけでなく、安全な環境を守るための責務といえます。

2022年のアスベスト法改正による報告制度について

2020年に「大気汚染防止法」が改正され、2021年4月から段階的に新制度が導入されました。その中で特に重要な変更点が、2022年4月から施行された「事前調査結果の報告義務化」です。

従来から、工事前にアスベストの有無を調べる事前調査は義務付けられていましたが、改正により調査結果を行政に報告する制度が追加されました。報告対象となるのは、解体面積80㎡以上の建物の解体工事、請負金額が100万円以上(税込)の改修工事、または請負金額100万円以上(税込)の特定工作物の工事です。重要なのは、アスベストの有無にかかわらず「必ず報告が必要」とされた点です。報告は石綿事前調査結果報告システム(GビズID)を通じて行うことが定められています。報告の義務は元請業者に定められています。

この制度は、調査や処理の不備による飛散事故を防ぐことを目的としています。報告を怠った場合や虚偽の報告を行った場合には、元請業者に直接罰が科される可能性もあります。つまり、現場任せではなく、元請業者をはじめとする工事に関わる全ての関係者が法令を理解し、適切な報告と記録を徹底する必要があります。

2022年の報告義務化により、アスベスト調査はより透明性と信頼性が求められる段階に入りました。今後も資格要件や調査方法に関する規制強化が進むと考えられるため、工事を依頼する側も、調査から除去・処分まで一貫して対応できる専門業者を選定することが安全確保につながります。

届出(レベル1・2)と「アスベスト事前調査結果の報告」を混同しない

アスベストを含む建築物を解体・改修する際には、関係法令に基づき「届出」と「事前調査結果の報告」という二つの手続きが必要になります。しかし、この二つは制度の位置づけも提出先も異なるため、混同しないことが重要です。

まず「届出」とは、アスベスト含有建材のレベルに応じて求められる手続きです。特に飛散性の高いレベル1(吹付け石綿)やレベル2(保温材、耐火被覆材、断熱材など)の除去・封じ込め・囲い込み作業を行う場合には、工事開始の14日前までに「工事計画届」(労働基準監督署あて)や「特定粉じん排出等作業届」(都道府県知事あて)を提出する義務があります。

これらの届出は、作業中の労働者や周辺環境への飛散リスクを防ぐことを目的としており、具体的な作業計画や安全対策を行政に示すことが求められます。一方で、2022年4月から義務化された「アスベスト事前調査結果の報告」は、工事規模に基づいて全てのアスベスト含有建材(レベル1~3)を対象としています。

床面積80㎡以上の解体工事や請負金額100万円以上の改修工事などが対象で、調査の結果、アスベストが「ある場合」も「ない場合」も必ず電子システム(GビズID)を通じて報告しなければなりません。これは、調査そのものの透明性を高め、施工前に行政が把握できる仕組みを整えることを狙いとしています。

つまり「届出」はレベル1・2の高リスク作業における安全管理のための事前申請であり、「事前調査結果の報告」は工事規模を基準とした全般的な調査記録の行政報告です。両者の役割は補完的ですが別制度であるため、誤解して片方だけ手続きを行った場合には法令違反となる可能性があります。工事を計画する事業者は、レベル分類と工事規模を正しく確認し、それぞれの法的義務を確実に履行することが求められます。

アスベスト法違反に対する罰則と行政対応

アスベストは健康被害が深刻なため、2021年以降「大気汚染防止法」を中心に関連法令が順次改正され、2022年には事前調査結果の報告義務、2023年には有資格者による調査の義務化などが施行されました。これに伴い、違反行為に対しては従来以上に厳しい罰則と行政対応が取られるようになっています。

典型的な違反例としては、アスベスト事前調査を行わずに工事を開始するケースや、調査が形式的で実態を把握できていないケース、あるいは飛散防止策を怠ったまま解体作業を進めるケースが挙げられます。

これらはいずれも重大な健康リスクを招く行為であり、行政の監視下で強く取り締まりが行われています。違反に対する行政処分には、工事の停止命令や改善命令、違反内容の公表といった措置が含まれます。さらに公共工事からの指名停止処分などが下された事例も実際に起きています。

特に故意や重大な過失が認められる場合には刑事責任を問われ、拘禁刑や罰金刑が科されることもあります。また、アスベスト飛散によって第三者に健康被害が及んだ場合には、被害者やその家族から損害賠償請求を受ける可能性があり、経済的負担も甚大となります。

行政側の対応も強化されており、厚生労働省や環境省の方針に基づき、各自治体が立入検査や監視体制を強化しています。特に報告義務を怠った事業者や報告内容に疑義がある事業者で違反が多いことから、重点的にチェックが行われています。

違反を防ぐためには、まず有資格者による正確な事前調査を徹底し、飛散防止措置を確実に講じることが必要です。そのうえで、従業員への教育や社内監査の強化、外部専門家の活用など、法令遵守を確実にする仕組みを整えることが求められます。アスベストに関する規制違反は企業の社会的信用を大きく損なうため、適正な対応が不可欠です。

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