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アスベストは労災の対象?認定基準から支援制度・実例まで紹介

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アスベストは労災の対象になる?

日本の労災保険制度は、労働者が業務に起因して負傷や疾病、障害、死亡(業務災害)を被った場合に給付を行う仕組みです。
厚生労働省は「石綿(アスベスト)にばく露する業務に起因する疾病」を明確に定めており、建設業、造船業、断熱材製造業、解体業などで従事した労働者が後年に関連疾患を発症した場合でも、労災として認定される可能性があります。

ただし、労災認定には業務と疾病の因果関係を示す「業務起因性」の立証が不可欠です。
具体的には、どの職場で、どのような作業を、どのくらいの期間行ったかといったばく露歴が重視されます。
吹付け材の除去、造船所での断熱材作業などの記録は重要な証拠となります。
さらに、X線やCT検査の結果、呼吸機能検査のデータ、医師の診断書、就労記録や作業環境の資料など、多様な証拠が審査の対象となります。

労災として認められた場合には、以下のような給付を受けることが可能です。
療養補償給付(治療費・入院費)、休業補償給付(休業4日目以降、基礎日額の60%)、傷病補償年金(長期療養が必要な場合)、障害補償給付(後遺障害が残った場合の年金または一時金)、介護補償給付(介護費用)、遺族補償給付や葬祭料など、生活を支える仕組みが整えられています。

このように、アスベストによる健康被害は労災の対象として位置づけられ、被害者や遺族の生活を支援する制度が用意されています。
認定までには医学的・職歴的な証明が必要で負担もありますが、補償が確定すれば経済的・精神的な大きな支えとなります。

アスベストの労災認定の基準とは

アスベストによる健康被害は、仕事を通じて石綿を吸入したことが原因と認められる場合、労災保険の対象となります。
労災保険制度は、業務に起因して負傷や疾病、障害、死亡といった被害を受けた労働者やその遺族に給付を行う仕組みであり、
アスベスト被害もその中に含まれています。

具体的には、建設現場や工場などでアスベストにさらされ、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚などの疾病を発症した場合に、
労働基準監督署長の認定を受けることで給付を受けることができます。なお、2006年2月には労災認定の基準が改正され、
より明確にアスベスト関連疾患が労災対象とされました。

労災認定を受けるためには、病気と業務の因果関係が認められる必要があります。
たとえば、長期間にわたりアスベストを扱う作業に従事していた記録や、
発症した疾病が医学的にアスベストとの関連性を持つと判断された場合に対象となります。
この認定を経て初めて、労災保険からの補償を受けることが可能です。

給付の内容は多岐にわたり、治療費にあたる療養補償給付、休業中の生活を支える休業補償給付、長期にわたる傷病に対する傷病年金、障害が残った場合の障害補償給付、介護が必要になった場合の介護補償給付などが設けられています。
さらに、労働者が亡くなった場合には遺族補償給付や葬祭料が支給されます。

アスベストによる疾病は潜伏期間が長いため、退職後に発症するケースも少なくありません。
その場合でも、過去の業務でのばく露状況が確認できれば、労災認定がなされる可能性があります。
申請にあたっては、診断書や従事歴、作業環境に関する資料などが重要となるため、
早い段階で労働基準監督署や労働局に相談することが推奨されます。

このように、アスベストによる労災認定の基準は、業務上のばく露と発症疾病の因果関係に基づいて判断され、認定後は幅広い補償が提供される仕組みになっています。被害に心当たりがある方は、制度を正しく理解し、必要な手続きを行うことが重要です。

アスベストに関連する労災認定データ

アスベストによる労災認定件数は2000年代以降大幅に増加し、現在も高い水準で推移しています。
これは、アスベストばく露から発症まで20年から40年という長い潜伏期間があるためで、
高度経済成長期に建設や製造現場で石綿を扱った人々が近年になって発症し、労災を申請する事例が増えていることが背景にあります。

厚生労働省の発表によれば、令和5年度(2023年度)に石綿関連疾病として労災認定されたのは全国で1,308件であり、
内訳は中皮腫642件、肺がん433件、石綿肺62件、びまん性胸膜肥厚73件、良性石綿胸水22件となっています。
また、同年度に労災保険給付の請求があった件数は1,304件で、支給が決定したのは1,170件に上りました。

さらに、労災の時効が過ぎた事案に対応する「特別遺族給付金制度」も活用されており、
2023年度は請求件数が317件、支給決定件数が158件と公表されています。
これらはすべて死亡事案に対して支給されたものであり、
長期の潜伏期間を特徴とするアスベスト疾患の特殊性を踏まえた仕組みとして機能しています。

認定が行われた事業場は1,318か所に及び、そのうち約93.6%にあたる1,233か所の名称や所在地などが公表されました。
注目されるのは建設業での労災認定の増加であり、製造業など他業種が減少傾向にある一方で、
建設業における新規認定が全体の件数を押し上げています。特に小規模事業場における被害が多く、新たに認定される事例も少なくありません。

これらのデータは、アスベスト被害が過去の公害ではなく、今なお現在進行形の社会問題であることを明確に示しています。
被害の実態を可視化し、労災補償や救済制度を通じて被害者と遺族の権利を守るためには、国や関係機関による継続的な情報公開と社会的な注意喚起が欠かせません。

アスベスト被害者支援制度とは

建物所有者や元請業者にとって、アスベストによる健康被害を受けた方やその遺族を支援する制度を理解しておくことは重要です。
被害を受けた方が利用できる救済手段は複数あり、それぞれ対象者や補償の内容、申請方法に違いがあります。
状況に応じて最適な制度を選択することが、被害者やその家族の生活を守る上で不可欠といえます。

建設現場に従事していた作業従事者や一人親方、中小事業主などを対象とするのが「建設アスベスト給付金」です。
疾病の種類や重症度に応じておおむね550万〜1300万円の給付があり、既に亡くなっている場合は遺族が請求できます。
また、アスベスト工場で働いていた方は国を相手に訴訟を提起し、和解によって同額程度の賠償を受けられる制度も設けられています。

業務に起因して発症した場合には「労災保険」が適用され、療養補償や休業補償、障害補償、遺族補償などが給付対象です。
給付額は労働者の賃金に基づく「給付基礎日額」によって決まるため、個別のケースで異なります。

一方で、労災に該当しない方を救済するために2006年に創設されたのが「石綿健康被害救済制度」です。
独立行政法人環境再生保全機構が窓口となり、医療費の自己負担分や療養手当、特別遺族弔慰金などが支給されますが、補償額は労災制度より少額とされています。 

さらに、勤務先の企業などに対して「損害賠償請求訴訟」を提起することも可能です。
この場合、死亡慰謝料はおおむね2500万〜3000万円闘病中の場合も病状に応じて1000万〜2300万円程度といわれています。

これらの制度はそれぞれ特徴が異なるため、利用する際には時効や要件の確認が不可欠です。
建物所有者や元請業者が正しい情報を把握しておくことは、作業従事者や周辺住民の安全確保だけでなく、
万が一被害が発生した際に適切な救済につなげるためにも大切です。

実際のアスベスト労災認定の事例

元請業者や建物所有者にとって、アスベストに関連する労災認定の仕組みを理解しておくことは、
現場の安全対策や将来的なリスク対応に直結します。
実際の認定事例には多様なパターンがあり、業務と疾病の因果関係がどのように評価されるのかを知っておくことが有益です。

たとえば、建設現場で吹付け材を扱っていた作業従事者が退職から数十年後に悪性中皮腫を発症し、
典型的な潜伏期間と長期のばく露歴が考慮されて労災認定されたケースがあります。
また、造船関連の現場で断熱材を扱っていた方が肺がんを発症した事例では、喫煙歴があったものの、ばく露濃度や期間等からアスベストの影響が強く作用したと判断されました。

さらに、建材製造に従事していた労働者が石綿肺を発症し、業務起因性が認められた例も報告されています。
これらは生活習慣や既往歴に関わらず、業務との関連性が医学的に認められれば補償の対象となり得ることを示しています。

厚生労働省は定期的に労災認定事業場を公表しており、2018年度だけでも新規認定が数百件に上りました。
累計では一万件を超える事業場が労災認定の対象となっており、全国的に幅広い分野で被害が発生していることが確認されています。
2000年代以降、アスベストによる健康被害の深刻さが社会的に広く認識されるようになり、労災認定の件数も高水準で推移しています。

公開されているデータを通じ、自身が勤務していた事業場が労災認定に含まれているかを確認できる仕組みも整備されており、
これは被害の実態を把握するうえで大切な情報源となります。
こうした事例は、アスベスト問題が過去の出来事にとどまらず、現在も続いている課題であることを示しており、元請業者や建物所有者にとっても継続的な対応が求められる分野といえます。

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