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アスベストは少量なら大丈夫?誤解されやすい健康リスクと法規制 

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少量のアスベストでも安心できない理由

アスベスト(石綿)は極めて微細な繊維であり、肉眼では確認できないほどの大きさです。
これらの繊維が空気中に浮遊し、呼吸によって肺に吸い込まれると、長期間にわたり体内に蓄積し、将来的に重篤な健康被害を引き起こすことが知られています。
たとえ微量であっても、長期にわたるばく露があると、悪性中皮腫肺がんアスベスト肺などの発症リスクが高まるため、少量であっても「安全」とは断言できません。

アスベストの健康被害には潜伏期間があり、ばく露から10年から40年という長い年月を経て発症するケースが一般的です。
このため、症状が現れたときには原因が特定しにくく、過去に少量であってもアスベストに接した経験が重く影響している可能性もあります。
実際、過去には家庭内の補修作業で発生したわずかな飛散が原因とされる健康被害の報告例もあります。
したがって、たとえ量が少なくても、アスベストを取り扱う際には十分な注意と対策が不可欠です。

また、アスベストの繊維は非常に軽く、空気中に長時間浮遊しやすいため、作業が終了した後であっても残留粉じんによるばく露が発生する可能性があります。
特に換気の悪い室内や密閉空間では、微量でも繊維がとどまりやすく、日常生活の中で知らず知らずのうちに吸い込んでしまうリスクがあるのです。

さらに、衣類や髪の毛に付着した繊維が家庭に持ち込まれ、家族が二次ばく露を受ける例も報告されています。
これらの背景から、アスベストは「少量なら問題ない」という楽観的な考えでは対応できません。

個人が対処するには限界があるため、必ず専門業者に相談し、適切な作業環境の確保や防護措置を講じることが求められます。
行政や専門機関の最新情報をもとに、安全第一で対応する姿勢が重要です。

法令上はアスベストの「量」だけでなく「飛散性と使用状況」が重要視される

日本国内の法令においては、アスベストの取り扱いに関して「量」だけでなく「飛散性」と「使用されている状況」が重視されています。
石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法(大防法)では、アスベストを含む建材の種類や施工方法によって、厳密に管理基準が定められています。

たとえば、吹付けアスベスト(レベル1)や、保温材・断熱材(ル2)などは、たとえ小面積であっても除去作業を行う場合には、労働基準監督署への作業届の提出や、負圧隔離を含む飛散防止措置の実施などが義務付けられています。

非飛散性の成形板(レベル3)であっても、切断・破砕などの行為により飛散の可能性がある場合は、原形で取り外す場合と比べて飛散防止の作業基準が厳しくなります。

このように、アスベストに関する規制は「何グラム以上で規制対象になる」といった単純な基準ではなく、建材の種類と施工内容によって作業基準が決まるため、専門的な判断が必要です。
前提として、極少量であっても既存のアスベスト含有建材を除去したり損傷したりする場合には対応が必要といえます。

さらに、2021年の大気汚染防止法の改正により、石綿含有の有無にかかわらず、解体・改修工事を行う際には事前調査を実施した結果を都道府県知事に報告することが義務化されました。
これにより、適切な工事を行っていない場合、法令違反として指導や摘発の対象となるリスクが高まりました。。

また、たとえ飛散性の低い建材であっても、施工中に誤って破砕したり、飛散防止措置が不十分だった場合には、周辺環境への影響が問題となる可能性があります。

現場の状況に応じた法令の適用判断には、建築物石綿含有建材調査者など、適切な資格を持つ者による事前調査が不可欠です。
小規模な工事であっても、適切な調査を実施し必要な届出・措置を怠らないことが、法令順守と安全確保の鍵となります。

自己判断による「大丈夫」は危険|実例から学ぶアスベストリスク

過去には、アスベストの危険性を過小評価したことにより、深刻な健康被害や法令違反に発展した事例が数多く報告されています。

たとえば、一般住宅でDIYによって吹付けアスベストの一部を削ったり、成形板を不用意に切断・破砕したりした結果、周囲にアスベストが飛散し、後になって問題化したケースが存在します。

また、企業のリフォーム工事においても、解体時に使用建材の事前調査を怠ったため、作業員が無防備のままアスベスト粉じんを吸入し、労働災害として認定された事例があります。
いずれのケースでも、少量であることを理由に「大丈夫」と自己判断し、適切な対策を講じなかったことが問題の根本です。

これらの実例が示すとおり、アスベストに関しては「量が少ないから安全」という考えは非常に危険です。
飛散を防止する措置、適正な届出、専門業者の関与など、法律で定められた対応を怠らないことが、リスク回避の基本となります。

小規模・少量でも対象になるアスベスト工事・報告義務の具体例

解体・補修・改修工事に該当する場合には、一部を除き、アスベスト有無の事前調査と、そのうち一定規模以上の工事について行政への報告義務があります。
事前調査においてはたとえ1箇所の穴あけ工事だけの小規模工事であっても調査の対象となります。

さらに、吹付けアスベストや保温材などのレベル1・2の建材を扱う場合はその含有量にかかわらず、石綿則に基づく作業計画届の提出や自治体への届出が必要になります。
また、作業面積に関係なく、隔離措置や負圧集じん装置の設置、作業後の空気中濃度測定などが求められるなど作業基準が厳しくなります。

このように、「少量なら調査や報告不要」と思い込んでしまうと、法令違反となり、行政指導や罰則の対象となるおそれがあります。
工事にあたっては、建材のアスベスト含有有無を事前に調査し、対象建材が確認された場合には、速やかに必要な届出や防止措置を実施することが求められます。

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