アスベスト事前調査ガイド|義務化の背景や未実施リスク、事前調査が不要なケースと進め方
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アスベスト事前調査の義務化はいつから始まった?
アスベスト事前調査とは、建物の解体や規模の大きな改修を行う際に、その建材にアスベストが含まれているかを確認するために実施される工程です。繊維状のアスベストは目に見えないほど微細であり、建材の破砕に伴って飛散すると周辺住民や作業者が吸入し、健康被害を受ける恐れがあります。そのため、工事を始める前に調査を行うことは安全確保の上で欠かせない作業といえます。
かつては事業者の自主的な判断に委ねられていましたが、健康被害が社会問題として認識されるにつれて制度の必要性が高まりました。
転機となったのは2022年4月の法改正です。
この改正により、一定規模以上の工事に関しては、管轄する自治体及び労働基準監督署への事前調査結果報告義務が課されました。
これにより事前調査の実施の意識が高まったことはもとより、事前調査内容に疑義がある場合やリスクの大きい工事に関しては、行政側が事前に把握して指導や確認を行うことが可能になりました。
さらに、2023年10月からは調査を担当できる人材が限定される仕組みへと移行しました。
原則として「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者だけが調査を行える制度となり、知識と技能を備えた専門家によって調査精度の確保が図られています。これにより、信頼性の高い調査が実施されるようになりました。
なお、2006年9月以降は重量比0.1%を超えるアスベストを含む製品の製造や輸入、使用が全面的に禁止されています。
しかし、それ以前に建てられた膨大な数の住宅や公共施設、学校、商業ビルなどには今もアスベスト含有建材が残っているのが実情です。
これはアスベストの使用がかつてどれほど広範囲に及んでいたかを物語っており、今なお安全管理が重要であることを示しています。
アスベスト事前調査に関する法律改正の変遷
アスベスト規制は、1970年代から段階的に強化されてきました。最初の大きな動きは1975年で、特定化学物質等障害予防規則により重量比5%を超える吹付け材の使用が禁止されました。
その後1995年には規制が広がり、重量比1%を超える吹付け材が禁止対象となり、さらに有害性が高いとされるアモサイトやクロシドライトの輸入・製造も認められなくなりました。2004年には建材や摩擦材、接着剤といった用途でも使用が禁じられ、2006年9月1日からは重量比0.1%を超えるすべての製品が製造・輸入・使用禁止となり、全面禁止が実現しました。
こうした全面禁止を受けて課題となったのが、既存建物に残されたアスベストの扱いです。
建物所有者や工事発注者、元請業者には、解体や改修を行う前に事前調査を実施し、結果をもとに適切な工事計画を立てることが求められるようになりました。2021年4月からは事前調査結果記録を3年間保管することが法的に義務化され、翌2022年4月からは調査結果を行政へ報告することも必須となっています。この報告義務は、解体工事で床面積が80㎡以上、または改修工事の請負金額が税込100万円以上の場合に課され、個人住宅のリフォームも例外ではありません。
さらに2023年10月からは、調査を行える人材が限定される制度に移行しました。具体的には「特定建築物石綿含有建材調査者」「一般建築物石綿含有建材調査者」「一戸建て等石綿含有建材調査者」といった資格を持つ者に限定され、専門的な知識と技能を持つ人材によって調査の精度と信頼性を高める仕組みが導入されています。これにより、建物所有者や元請業者には専門家の選定という新たな責任が課される一方で、現場の安全性や法令遵守の確実性は大きく向上しました。
このような規制の変遷は、アスベストの健康被害を未然に防ぐための取り組みの積み重ねであり、社会全体で安全を守るための重要な仕組みとして現在も機能しています。
アスベストの事前調査をしないとどうなる?
建築物の解体や改修工事を行う際には、アスベストの有無を事前に確認することが法律で定められています。「大気汚染防止法」や「石綿障害予防規則」に基づき、工事前の調査とその結果の報告は義務化されており、2022年4月からは調査結果を行政に提出することが必須となりました。さらに2023年10月以降は、有資格者が調査を行わなければ認められない仕組みに移行し、専門性の高い人材による精度の確保が求められています。
この義務を怠った場合、単なる形式上の違反にとどまらず、作業者や周辺住民が石綿繊維を吸い込み、健康被害を受ける危険性を高める結果につながります。そのため、事前調査を行わなかったり虚偽の内容を報告したりした場合は、指導の対象となり、違反内容によっては懲役や罰金が科されることがあります。
さらに、アスベストが含まれていることが確認されたにもかかわらず適切な除去や飛散防止措置を取らなかった場合や、作業基準に適合しない方法で撤去を行った場合にも、罰則が適用される可能性があります。処罰の内容は法令ごとに定められており、大気汚染防止法に違反した場合は30万円以下の罰金、石綿障害予防規則に違反した場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています。このように、違反の内容や重さに応じた処罰が設けられています。
また、責任を負う主体は元請業者や法人にとどまらず、発注者や建物所有者にも及ぶ場合があります。事前調査を行うにあたって、発注者は元請に対し、業者設計図書の提出や調査費用の負担などに協力する配慮義務があります。そのため、元請業者だけでなく、発注者や建物所有者を含む関係者全員が協力し、適切な安全管理を徹底することが重要です。
アスベストの事前調査が不要なケース
解体工事や大規模な改修工事の際に義務づけられているアスベストの事前調査ですが、すべての工事が対象となるわけではありません。厚生労働省の通知により、調査が不要とされる場合が明確に設けられています。
【事前調査が免除になるケース】
以下の条件に当てはまる工事の場合、事前調査の対象外となります。調査自体が不要なため、調査結果の報告も必要ありません。
- 木材・金属・石・ガラス等のみの建材や畳、電球など、あきらかな石綿不含有の材料のみの除去等かつ、施工時に周りの建材損傷も無い工事
- 釘を打つ、抜くなどの軽度の工事
※電動工具を使う場合は調査対象になります。 - 現存する材料等建材を損傷・除去せず、新たな材料を追加するのみの作業
例:既存の塗装の上に塗装、既存の床材の上に接着剤で新たな床材を張るだけ、など。
※ただし、高圧洗浄する場合や、既存の建材に劣化がある場合には調査対象になります。
ただし、ここで注意が必要です。調査不要とされる範囲を誤って判断すれば、結果的にアスベストの繊維が飛散し、作業者や周辺住民の健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。さらに、法律の解釈を誤れば報告義務違反や安全管理義務違反となり、罰則や行政処分の対象になる可能性も否定できません。したがって、築年数や設計図書、仕様書といった資料を確認し、建材の種類や施工年代を正しく把握することが重要です。
調査が不要かどうかの判断を建物所有者や工事発注者だけで行うのは危険であり、必ず資格を持つ専門家や行政窓口に相談することが求められます。有資格者による確認を経ることで、調査不要の判断に客観性と信頼性を持たせることができ、法令遵守と安全確保の両立につながります。このように「不要」とされるケースであっても、最終的には専門的な視点を加えて慎重に判断することが不可欠です。
アスベストの事前調査の方法について
アスベストの事前調査は、解体工事や改修工事を進める際に安全を確保するために欠かせない工程です。
調査は設計図書等の書面調査から始まり、書面の確認を通じてアスベストを含む可能性がある箇所を洗い出します。
なお、書面調査の段階で対象建築物の新築着工日が2006年9月1日以降であることが確認できた場合には、現地調査を経ずに石綿含有建材は使用されていないと判断することができます。
次に、現地調査では建築物石綿含有建材調査者等の有資格者が目視により石綿含有建材の有無を判断します。
第一に建材の型番等を確認し建材メーカー等の公開する製品への石綿含有に関する情報と照合する方法で石綿含有の有無を判断しますが、型番がない、建材メーカーが必要な情報を有していないなどで石綿含有の有無の判断が困難な場合は必要に応じて建材から試料を採取し、専門機関に送って分析調査を行います。採取されたサンプルは、偏光顕微鏡や電子顕微鏡などの機器を用いて詳細に観察され、繊維の有無や種類が判別されます。
こうした科学的な検査を経て、アスベストが含まれているかどうかが最終的に確定します。石綿含有の有無が判断できない建材で、分析調査を実施しない場合には、アスベスト含有建材とみなして作業計画を行います。
「建築物石綿含有建材調査者」などの資格を持つ調査員が担当することで、建材の種類や施工年代を踏まえた精度の高い判定が可能となり、信頼性が一層高まっています。調査の結果は記録として保存し、別途「石綿事前調査結果報告システム」を通じて自治体に提出されます。令和5年度には全国で77万件を超える報告が行われており、数多くの工事が調査対象となっていることが分かります。
もし調査によってアスベストが含まれていると確認された場合や、建材の特定ができずアスベスト含有建材とみなす場合には、その後の工事で繊維が飛散しないよう養生や湿潤化を行い、レベル1、2の石綿含有建材である場合には負圧集じん装置を設置するなど徹底した防止策が取られます。また、作業者の安全を確保するため、防じんマスクなどの呼吸用保護具を着用して作業を行います。そして工事終了後には、作業記録を整理して再度報告書として記録・保存することも求められています。このように調査から報告までの流れを遵守することで、施工の透明性が保たれると同時に、作業従事者や周辺住民の健康を守る仕組みが整えられているのです。
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