アスベスト(石綿)の使用禁止はいつから?規制強化の背景と現在の課題
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アスベスト(石綿)の使用禁止はいつから?:日本の法規制を解説
国内でアスベスト対策の基礎として初めて作られた法律は「じん肺法」です。1960年に施行されました。
アスベスト(石綿)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性を併せ持つ「奇跡の鉱物」と呼ばれ、1955年ごろから長期にわたり建設現場で耐火、断熱、防音等の目的で使用された天然鉱物でした。
しかし、建設現場において長期間石綿粉じんを吸引したことで「じん肺」と呼ばれる慢性的な呼吸器疾患を引き起こし、療養する必要がある労働者が多く発生しました。
そこで、適正な健康管理を行うことを目的に、「じん肺法」では労働者の健康管理区分を1~4に区分し、定期健康診断・定期外健康診断、離職時健康診断の診断時期を明確に定めています。
管理区分の詳細(管理区分/健康診断の結果)
管理1 じん肺の所見がないと認められるもの
管理2 X線写真の像が第 1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3
a. X線写真の像が第 2型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
b. X線写真の像が第 3型又は第 4型(大陰影の大きさが片側の肺の1/3 以下のものに限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4
a. X線写真の像が第 4型(大陰影の大きさが片側の肺の1/3 を超えるものに限る)と認められるもの
b. X線写真の像が第1 型~第 4型(大陰影の大きさが片側の肺の1/3 以下のものに限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの
アスベスト(石綿)使用禁止の法改正はいつから?:1975年から始まった規制強化
アスベスト(石綿)の完全使用禁止まで、「じん肺法」が制定されてから50年以上の歳月がかかりました。
アスベスト使用禁止までの法改正歴史
1971年:「特定化学物質等障害予防規則」制定
石綿へのばく露対策が大きく変化した
1975年:5重量%を超える石綿の吹き付けが原則禁止
建材そのものの禁止ではないが、石綿含有の吹付作業が実質禁止に
一部のアスベスト(石綿)が使用禁止になったのはいつから?:1995年の転換点
1995年:1重量%を超える石綿の吹き付けを原則禁止
※アモサイト(茶石綿)/※クロシドライト(青石綿)の製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面禁止
石綿の種類と特徴
種類 | 通称 | 特徴 | 主な用途 | 毒性 | 使用禁止時期 |
---|---|---|---|---|---|
クリソタイル | 白石綿 | 柔軟で耐熱性が高い | スレート板、石綿セメント製品、ガスケットなど | 比較的低いが有害性あり | 2006年全面禁止 |
アモサイト | 茶石綿 | 高い耐熱性と耐薬品性を持つ | 断熱材、耐火材など | 非常に高い | 1995年全面禁止 |
クロシドライト | 青石綿 | 強度が高く耐薬品性が優れるが粉じんが飛散しやすい | 配管被覆材、断熱材など | 非常に高い | 1995年全面禁止 |
トレモライト | 自然界に存在、意図的に利用された例は少ない | 一部断熱材、混入製品など | 高い | 2006年全面禁止 | |
アクチノライト | 自然界に存在、石綿製品に混入されることがあった | 一部断熱材、混入製品など | 高い | 2006年全面禁止 | |
アンソフィライト | 自然界に存在、石綿製品に混入されることがあった | 一部断熱材、混入製品など | 高い | 2006年全面禁止 |
2004年:1重量%を超える石綿含有建材等、10品目の製造等禁止
労働安全衛生法に基づき、アスベスト(石綿)含有建材の使用を段階的に制限
2005年:建築物の解体等に伴う労働者の石綿ばく露防止措置を強化するため、石綿障害予防規則制定
労働安全衛生法に基づき、石綿粉じんへの暴露を防ぐための詳細な基準を定めた
アスベスト(石綿)はいつから全面的に使用禁止になったのか?
アスベスト(石綿)による健康被害が広く認知されるようになったことや、中皮腫や肺ガンが多発したことをきっかけに使用禁止法令が強化されていきました。
2006年:0.1重量%を超える石綿含有製品を使用禁止(一部、猶予措置あり)
微量のアスベスト(石綿)を含む製品に対しても新たな基準が設定
2012年:0.1重量%を超える石綿含有製品使用禁止の猶予措置撤廃
ジョイントガスケットシート、グランドパッキンなどに適用されていた猶予措置が撤廃されて、アスベスト(石綿)含有製品の使用全面禁止
全面使用禁止にあたり、アスベスト含有建材の製造や使用が一切禁止となりましたが、2006年以前に施工された建築物・工作物にはアスベスト(石綿)含有建材が多く使用されています。
そこで既存の建材の除去・損傷を伴う作業が発生する建築物・工作物の解体・リフォームでは、アスベストへの暴露を防止するため、より厳格な安全基準を求められるようになりました。
アスベスト(石綿)使用禁止後に直面する新たな課題とは?
アスベスト(石綿)を含む建物の解体工事件数のピークは2030年と予想されています。
一部の業者では「自分ならば、少しならば大丈夫だろう」と正しいアスベスト(石綿)対応を行わない事業者も多く見られますが、アスベスト(石綿)は個人の問題ではありません。
現場での養生や防護服の取り扱いなど、適切な防護策は、作業者のみならず近隣住民の方や作業者の家族を守るために必要不可欠です。
実際に作業者の衣服に付着していたアスベスト(石綿)の粉じんを吸引し、ご家族が中皮腫を発症した事例など、健康被害の事例は多く報告されています。
また行政への電子報告や必要掲示物の掲示などの法令遵守をすることで、摘発やそれに伴う業務停止処分などから会社を守ることができます。
会社をまもる、それ以前にいのちをまもるため、アスベスト(石綿)対策は必須です。
ところが、複雑な現場対応や、フォーマットがない複数種類の必要書類、膨大な行政への電子報告件数から、現実的に対策をすることが困難であるというお声も多く出ております。
- 現場では下記のような課題が露見しています。
- 法令遵守できる対策ができるリソースが十分にない
- 対策をするために必要な知識がない
アスベスト(石綿)事前調査の資格取得が義務化されたのはいつから?
2006年以降、正しい知識を身につけた作業者がアスベスト(石綿)対応作業に従事できるよう、順次資格の取得が義務化されました。
2006年4月:石綿作業主任者
アスベスト(石綿)若しくはアスベスト(石綿)をその重量の0.1パーセントを超えて含有する製剤その他の物を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)又はアスベスト(石綿)等を試験研究のために製造する業務に選任する主任者に必要な資格です。
※講習が必要な業務の詳細については下記に定められております。
- 労働安全衛生法第14条
- 同施行令第6条の23号
- 労働安全衛生法別表第18条第23号参照
2023年10月:建築物石綿含有建材調査者
資格区分と必要書類
区分 | 学歴等 | 実務経験 | 必要書類 |
---|---|---|---|
1 | 大卒(建築) | 建築実務経験2年以上 | 実務経験証明書、卒業証明書、履修科目証明書 |
2 | 短大卒(建築3年) | 建築実務経験3年以上 | 実務経験証明書、卒業証明書、履修科目証明書 |
3 | 短大卒(建築)/高専卒 | 建築実務経験4年以上 | 実務経験証明書、卒業証明書、履修科目証明書 |
4 | 高卒等(建築) | 建築実務経験7年以上 | 実務経験証明書、卒業証明書、履修科目証明書 |
5 | 学歴不問 | 建築実務経験11年以上 | 実務経験証明書 |
6 | 建築/環境(石綿)行政実務2年 | 建築/環境行政実務経験2年以上 | 実務経験証明書 |
7 | 特化作業主任者 | 石綿調査実務経験5年以上 | 講習修了証明書、実務経験証明書 |
8 | 石綿作業主任者 | 実務経験不問 | 講習修了証明書 |
9 | 各種専門官 | 実務経験証明書 | 実務経験証明書 |
10 | 労働基準監督官2年 | 従事経験2年以上 | 実務経験証明書 |
11 | 作業環境測定士 | 石綿調査実務経験5年以上 | 登録証、実務経験証明書 |
※詳細はCERSIの建築物石綿含有建材調査者講習/受講資格ページでご確認ください
2026年1月:工作物石綿事前調査者
炉設備、電気設備、配管及び貯蔵設備※の解体又は改修の作業における、アスベスト(石綿)等の使用の有無の事前調査で必要となる資格です。
※炉設備、電気設備、配管及び貯蔵設備、反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備(建築物に設ける給水設備、排水設備、換気設備、暖房設備、冷房設備、排煙設備等の建築設備を除く。)、焼却設備、貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く。)、発電設備(太陽光発電設備及び風力発電設備を除く。)、変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む。)
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アスベスト(石綿)情報ナビを運営する一般社団法人企業環境リスク機構(CERSI)では、上記資格講習をすべてお取り扱いしております。
石綿作業主任者
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