アスベストを含む建物の取り壊しの流れとリスク管理
- 最終更新日:

近年、老朽化した建物の解体が進む中で、特に注意が必要なのがアスベストを含む建物の取り壊しです。
アスベストは吸引すると健康被害を引き起こす危険性があり、適切な管理を怠ると作業員だけでなく近隣住民にもリスクが及びます。
本記事では、アスベスト含有建物の事前調査の重要性、法令に従った業務手順、飛散防止措置、安全管理の具体例について詳しく解説します。
正しい知識を持つことが、環境保全と健康リスク低減の第一歩です。
取り壊し工事におけるアスベストの安全な取り扱い
アスベストはその有用性から長年にわたって建築資材として使用されてきましたが、現在ではその健康被害のリスクから全面的に禁止されています。
アスベストの誤った取り扱いによる健康被害を防ぐために、アスベストを含む建材が使用された建築物を解体・撤去する際には、法令に従った安全な方法で作業を行う必要があります。
アスベストを含む建材は、飛散しやすさに応じて3つのレベルに分類されており、特に危険性が高いものについては、より慎重な取り扱いが求められます。
分類 |
飛散性(危険性) |
主な建材 |
主な使用箇所 |
レベル1 |
著しく高い |
吹付材 |
耐火建築物のはりや柱、機械室、ボイラー室など |
レベル2 |
高い |
保温材、断熱材 |
ボイラー本体・配管、ダクトなど |
レベル3 |
比較的低い |
内装材、外装材 |
一般住宅の屋根、壁、天井、床など |
なぜアスベストは使われなくなったのか?
過去には断熱性・耐火性・防音性に優れた素材として重宝されていたアスベストですが、
現在では発がん性を含む健康リスクが明らかとなり、日本国内では製造・使用ともに全面禁止されています。
アスベストを含む建物の取り壊しに必要な準備と事前調査
アスベストを含む建物の取り壊しを行うには、安全性を確保するために、計画段階から綿密な準備と有資格者による事前調査が必要です。
適切な手順を踏むことで、近隣住民や作業員の健康被害リスクを最小限に抑えることができます。
有資格者による調査と分析
まずは、「一般建築物石綿含有建材事前調査者」「工作物石綿事前調査者」などの有資格者により、アスベスト含有建材の有無を調査します。
調査は、建物の設計図書や施工記録、改修履歴などを確認する書面調査から始まり、その後、現地での目視確認や必要に応じた分析調査に進みます。
分析調査においては、採取した建材のサンプルを専門の分析調査機関に送付し、調査を依頼することで、石綿含有有無が判定されます。
作業計画と届出、住民対応
石綿事前調査結果で石綿がありと判明したら(またはみなしで進める場合)、次は作業計画書の作成です。
この作業計画書には、除去手順、防護措置、使用する設備、廃棄物処理方法などの詳細を盛り込みます。
さらに、飛散性が著しく高く、取扱いに注意が必要なアスベスト含有建材(レベル1,2)のアスベスト除去作業は
「石綿障害予防規則(石綿則)」および「大気汚染防止法」に基づき、作業開始の14日前までに労働基準監督署や自治体へ届出を行う必要があります。
比較的飛散性の低いレベル3のアスベスト含有建材であっても、条例によって届出を必須とする自治体もあるため、事前確認が重要です。
また、工事の規模によっては、周辺住民への理解を得るために、説明会の開催や案内文書の配布も重要です。
こうした準備を丁寧に進めることで、トラブルを防ぎ、円滑に解体工事を進めることが可能になります。
安全な取り壊し作業の手順と防護対策
アスベストを含む建材の取り壊し作業では、作業員や周辺環境への健康被害を防ぐために、厳重な安全管理が求められます。
適切な作業手順と防護対策を徹底することが、安心・安全な解体工事の基本です。
作業現場の隔離と作業員の防護
レベル1、レベル2の取り壊し作業では、
まず、作業区域は十分な強度を有するプラスチックシート等で隔離養生し、アスベスト粉じんの飛散を防止します。
集じん・排気装置を設置して、空気の流れを管理し、外部への漏出も防ぎます。
作業従事者は、国家検定に合格した防じんマスクと専用の保護衣を着用し、皮膚の露出を防ぐために手袋やゴーグルも装備します。
また、作業区域への出入り時に石綿繊維が外部に流失しないよう、更衣室(作業用の衣服等と通勤用の衣服等とを区別しておくことができるもの)、
洗身室(エアシャワーを備えたもの)、前室からなるセキュリティゾーンを設置します。
レベル3の場合はレベル1、2程の対応は求められませんが、防じんマスクの着用、石綿作業主任者の選任など作業基準に則った防護対策を行う必要があります。
湿潤化・除去・廃棄の徹底
取り壊し作業中は、常に湿潤状態を保ち、アスベスト粉じんの飛散を抑制します。
除去作業は原則として手作業で行い、電動工具を用いる場合はより徹底した飛散抑制措置を行う必要があります。
除去したアスベスト建材は、破損を防ぐために丁寧に扱い、専用の二重袋に密封するなど、厳重に梱包します。
袋には「アスベスト廃棄物」等と明記し、漏洩や破損がないよう慎重に保管します。
このように各工程で厳格な管理を行うことが、アスベストによる健康被害を未然に防ぐ鍵となります。
取り壊し後の廃棄物処理と法的手続き
レベル1、2のアスベストを含む建材を取り壊した後に発生する廃棄物は、「特別管理産業廃棄物」の「廃石綿等」に該当し、
レベル3の廃棄物の場合は「特別管理産業廃棄物には該当しないものの「石綿含有産業廃棄物」に該当します。
いずれも通常の廃棄物以上に厳しいルールのもとで処理されます。
法令を遵守し、周囲への影響を最小限に抑えるために、適切な手続きと管理が不可欠です。
処理業者の選定と廃棄物の運搬
レベル1、2のアスベスト廃棄物の処理は、必ず「廃石綿等の特別管理産業廃棄物処理業」の許可を受けた業者に依頼します。
レベル3の場合も「石綿含有産業廃棄物」の処理の許可を持った業者に依頼します。
依頼時には、許可証の確認に加え、過去の処理実績や対応力も調査し、信頼できる業者を選定することが重要です。
廃棄物は現場で専用の二重袋に密封するなど、厳重に梱包し、漏洩や破損がないかを厳重に確認した上で、
積み込み時や運搬中に変形、破損して飛散が起こらないように整然と車両に積み込み、運搬します。
収集運搬を委託する場合には必ず許可を持っている業者と契約を交わして処分場に運搬します。
「廃石綿等」や「石綿含有産業廃棄物」は破砕などの中間処理を行うことができないため、
石綿の埋め立てを行える最終処分場か溶融・無害化などの処理ができる中間処理場に搬入することが定められており、法令に従った処理が求められます。
マニフェスト管理と報告書の提出
アスベスト廃棄物をはじめ、産業廃棄物の運搬・処分に際しては、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」の交付が義務付けられています。
マニフェストにより、排出から最終処分までの流れを可視化し、不正処理やトラブルを未然に防ぐことができます。
なお、特に公共工事等においては工事完了後に工事報告書や処分証明書をまとめ提出することを求められる場合があります。
これにより、適切な処理が行われたことの証明となり、監査や指導への対応、地域住民への説明責任も果たすことができます。
EMSがアスベスト対応の第一歩をサポート
建物の解体や改修において、アスベストの調査や除去は法令で義務づけられており、
対応を怠ると行政指導や工事の中断、さらには健康被害といった重大なリスクに直結します。
EMSでは、こうしたアスベスト法令対応を専門とし、各種法令に対応した書類の作成から保管、さらには分析調査の依頼まで、
必要な工程をすべてワンストップで支援しています。
建築物石綿含有建材調査者などの資格を有した専門スタッフのサポートも充実しており、
現場の状況に応じて最適な判断と最新の法改正にも即した問い合わせ対応を行っています。
アスベスト問題に直面し、「何から手をつければよいのか分からない」と感じている法人様にこそ、まずはEMSにご相談いただきたいと考えています。
EMSでは、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が在籍し、法令に即した調査計画の立案から、
書類作成・行政対応、除去工事に必要な手続き支援まで、中立的な立場から丁寧にご案内いたします。
また、必要に応じてアスベストONEの専用サービスを通じた一括サポートも可能です。
最初の一歩として、EMSへのご相談が安心・安全なアスベスト対応の出発点となります。