築年数でわかるアスベストリスク|使用箇所・調査手順・除去までの一連の流れとは
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築年数でアスベストの使用は判断できる?
アスベストは建築材料として広く使用されている鉱物繊維で、その優れた断熱性・耐火性・防音性などから、1950年代から1990年代初頭にかけて日本国内で数多くの建築物に使用されてきました。
そのため、建物の築年数はアスベスト使用リスクを推定するうえで、非常に重要な判断材料となります。
特に注意が必要なのは1980年以前に建てられた建築物です。
この時期はアスベストの使用が最も一般的であり、吹付け材、断熱材、外壁材、天井材、壁材、床材など、さまざまな部位に含有されていました。
1970年代に入り、アスベストの健康被害が社会問題化し始めたものの、具体的な法規制が進んだのは1980年代以降のことです。
1995年には吹付けアスベストの使用が原則禁止され、2006年9月にはほぼ全てのアスベスト含有建材の製造・使用が禁止されました。
しかし、それ以前に建てられた建築物には、規制前のアスベスト建材が残存している可能性があります。
したがって、1980〜2006年8月の間に新築着工された建物でもアスベストが使用されている可能性は十分にあり、注意が必要です。
アスベストが含まれる可能性が高い箇所
アスベストは、かつて建築資材として非常に多用途に使われていたため、建物内のさまざまな部位に含まれている可能性があります。
特に1950年代から1980年代に建てられた建築物には、アスベストが高い確率で使用されており、改修や解体前にはアスベスト含有リスクの高い箇所を重点的に確認することが重要です。
まず、吹付け材は最もリスクの高い建材の一つです。
鉄骨構造の柱・梁・天井裏などに吹き付けられた耐火被覆材や断熱材として、アスベストが頻繁に使用されていました。
特に1970年代以前の建物では、アスベストが含まれている可能性が極めて高く、劣化により繊維が飛散していることもあります。
また、配管の保温材・断熱材にもアスベストが使用されていました。
蒸気配管や給湯配管の周囲に巻かれた保温材、ボイラー周辺、煙突や天井裏の断熱材などが該当し、吹付け材に次いで飛散のリスクの高いアスベスト含有建材として認識されています。
そのほか、床材(ビニル床タイルや接着剤)、天井材や壁材(石膏ボード、クロス)、軒天(ケイ酸カルシウム板第1種)や屋根材(スレート)などにもアスベスト含有建材の使用例があります。
住宅だけでなく、学校、病院、工場、オフィスビルなど幅広い用途の建築物に使われているため、建物の種類を問わず注意が必要です。
アスベストの使用箇所は一見して判断しづらく、露出していない場合や内装材の下に隠れていることもあるため、専門業者による詳細な目視調査やサンプリング調査を行わなければ、正確な判断はできません。
アスベストが使われている可能性が少しでもある箇所については、自己判断で触れたり壊したりせず、必ず専門家に相談することが安全確保の第一歩です。
築年数別・代表的なアスベスト使用建材一覧と見分け方
アスベスト(石綿)が使用された建材は、建築の施工年代によってその種類や使用箇所が異なります。
築年数を基に代表的なアスベスト含有建材とその見分け方を理解することは、リスク把握や調査準備に役立ちます。
1950年代~1970年代前半
この時期はアスベストの利用が最盛期で、吹付け耐火被覆材や断熱材に多用されました。
鉄骨の柱や梁、天井裏に吹き付けられたアスベスト含有吹付け材は特に多く、粉じんが飛散しやすいため危険度が高いです。
見た目は白色や灰色のざらざらした質感で、表面は粉っぽく劣化している場合があります。
また、けい酸カルシウム板やスレート板(外壁・屋根材)もこの時期に多用され、板状で固く硬質な外観が特徴です。
1970年代後半~1980年代末
健康被害の報告を受け規制が始まったものの、まだ多くのアスベスト含有製品が流通しています。
吹付け材は減少しましたが、断熱材や配管保温材、ボイラー周辺の耐火被覆材として使用され続けました。
特に断熱材は、配管の周囲を包む白っぽい綿状や繊維状の材料で、外からは見えにくいケースが多いです。
床材のビニルタイルや接着剤に含まれる場合もあり、タイルは薄く、色は茶色やグレー、模様があることもあります。
1990年代以降
1995年以降、吹付けアスベストの使用は禁止され、2006年9月にほぼ全てのアスベスト含有建材の製造・使用が禁止されました。
したがって、この年代の建物では吹付け材等のアスベスト使用の可能性は低いですが、床材やボード類などにアスベスト含有建材を使用している可能性は十分にあるといえます。
アスベスト含有建材は外観だけでの判別は難しく、特に断熱材や配管保温材は外側からは見えません。
築年数と建材の種類、使用場所を元にリスクを想定し、専門業者による試料採取と分析が不可欠です。
劣化や損傷がある場合は特に注意し、自己判断で撤去や破壊を試みないことが重要です。
築年数が古い建物でのアスベスト調査手順と注意点
築年数が古い建物、特に1980年代以前に建てられた建築物では、アスベスト含有建材の使用リスクが高いため、解体や改修前に徹底した石綿事前調査が必要です。
事前調査は法律で義務付けられており、適切な手順を踏まないと健康被害や法令違反のリスクが生じます。
調査の過程で注意すべきことの一つが、飛散防止対策・ばく露防止対策の徹底です。
古い建材は劣化しており、取り扱いによりアスベスト繊維が空気中に放出されやすいため、調査時から適切な保護衣やマスクの着用、
特に検体採取を行うようであれば養生や湿潤化などの粉塵抑制策が必須です。
また、築年数の古い建物では改修や増築によって一見、同一の建材に見えても、複数種類の建材が混在しているケースも多く、同一の建材の範囲の判断は特に慎重に行う必要があります。
事前調査の結果、アスベスト含有建材の使用が判明した場合、あるいはアスベスト含有ではないと断定できない建材が使用されていた場合、
調査結果に基づいて、適切な除去計画を立てることが求められ、除去作業時には有資格者を配置しなければなりません。
最後に、調査結果や作業内容の記録管理と報告義務も重要です。
法令に準じた書類作成や行政、発注者への報告を怠ると罰則の対象となるため、法令に則った報告を行う必要があります。
アスベストを放置するリスクと早期対応の重要性
アスベストはかつて多くの建築資材に使用され、耐熱性や断熱性に優れているため広く使用されていましたが、
人体への健康被害が明らかになったことから現在は厳しく規制されています。
アスベストの対策を怠ると、重大なリスクを引き起こす可能性があります。
最大のリスクは、アスベスト繊維の飛散による健康被害です。
アスベストは微細な繊維状の鉱物で、劣化や破損によって空気中に飛散すると、呼吸器から体内に侵入しやすくなります。
これが原因で、肺がん、中皮腫、アスベスト肺などの重篤な疾患を引き起こすことが確認されています。
症状が現れるまでに数十年かかる場合もあり、知らず知らずのうちに深刻な健康被害が進行する危険性があります。
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