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アスベスト繊維壁とは?歴史・健康リスク・分析方法と安全な除去手順を解説

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建物の内装仕上げ材にはさまざまな種類がありますが、特に築年数の経過した住宅や施設では、「繊維壁」と呼ばれる表面仕上げ材が使用されていることがあります。

繊維壁とは、木質繊維やパルプを主成分とした塗り壁材で、調湿性や独特の風合いから、和風建築を中心に昭和中期まで広く普及していた建材です。

ただし、繊維壁の中にはアスベストを含む製品も存在しており、解体や改修の場面において、思わぬリスクが潜んでいる可能性があります。
特に1970年代から1980年代にかけては、耐久性や強度を高める目的でアスベストが混入された事例が報告されています。

古い建物のリフォームや解体を計画される際には、繊維壁の特徴とアスベストの関係について正確に理解しておくことが、健康被害を避けるため、また適切な工事計画を立てるうえでも非常に重要です。

この記事では、繊維壁の概要からアスベスト使用の歴史、含有の見分け方、安全な調査方法、そして除去にかかる費用や作業手順までを、わかりやすく解説いたします。

繊維壁とは?アスベスト使用の歴史と特徴

繊維壁は、木材パルプや麻、紙繊維などの天然素材や糸状の化学繊維を原料とし、水に溶かしたうえで接着剤や顔料を加え、壁面に塗装して仕上げる内装材です。
ザラザラとした質感が特徴で、特に和室の壁や天井に広く使われてきました。
施工方法には「吹付け」や「コテ塗り」があり、模様をつけるなど装飾的な演出も可能です。

かつては、こうした繊維壁の一部にアスベストが使用されていたことがあります。
アスベストは繊維状鉱物で、断熱性・耐火性・補強性に優れていたため、繊維壁の強化目的で混入されていたのです。
1960年代から1980年代にかけて製造された製品では、アスベストの使用が確認されています。

2006年9月の改正労働安全衛生法施行により、アスベストの全面使用禁止が実現しましたが、それ以前に施工された繊維壁については注意が必要です。
なお、見た目だけではアスベストの有無を判別することはできませんので、正確な判断には専門機関による科学的分析が必要となります。

アスベスト含有繊維壁の危険性とは?

アスベストが含まれている繊維壁は、表面の劣化や解体・改修作業によって粉じんが発生すると、空気中にアスベスト繊維が飛散するリスクがあります。
アスベスト繊維は非常に微細で肉眼では確認できず、吸い込んだ場合は肺に沈着し、中皮腫、肺がん、石綿肺といった深刻な健康被害を引き起こすおそれがあります。

繊維壁は室内の仕上げ材として直接触れる機会が多いため、特に劣化した箇所や、落書き・打痕の補修などで削った場合には、粉じんが飛散するリスクが高くなります。
また、外見上は異常がなくても、もろい性質の材料である場合には、日常生活の中で知らぬ間に微細な粉じんが放出されている可能性も否定できません。

特に乳幼児や高齢者、呼吸器に疾患がある方が生活する空間では、発注者としてより高い安全配慮が求められます。
アスベスト含有が疑われる繊維壁を放置することは、将来的な健康リスクにつながるため、早期の対応が望まれます。

繊維壁に含まれるアスベストを見分ける方法

アスベスト含有の有無を明確にするには、専門の調査会社または分析機関に依頼し、JIS A 1481準拠の分析を受ける必要があります。
この分析には「定性分析」と「定量分析」の2種類があり、一般的にはまず定性分析でアスベストの有無を判別し、必要に応じて含有量の測定(定量分析)を行います。

定性分析には、偏光顕微鏡分析(PLM)、X線回折分析(XRD)、赤外分光分析(FT-IR)などの手法があり、採取した試料からアスベスト繊維の有無を判断します。
これらの分析には、施工面から数センチ四方のサンプルを採取する必要がありますが、飛散リスクを考慮し、発注者自身が採取を行うのではなく、専門会社に依頼することが望ましいです。

また、対象工事が解体や改修など「事前調査が必要な工事」に該当する場合には、労働安全衛生法や大気汚染防止法に基づく報告義務も生じるため、調査結果は地方自治体や労働基準監督署への届出資料としても利用されます。

アスベスト繊維壁除去の費用相場と安全な手順

アスベストが含まれている繊維壁を除去する場合は、「石綿障害予防規則」や「大気汚染防止法」に則った作業手順を遵守しなければなりません。
発注者が業者に直接依頼する際は、建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者、特別教育修了者など、必要な資格を保有していることを確認することが重要です。

除去作業の流れとしては、施工範囲を隔離したうえで、負圧集じん装置や湿潤化による飛散防止措置を施します。
その後、除去・梱包・密閉の工程を経て、最終的に石綿含有産業廃棄物(産業廃棄物)や廃石綿等(特別管理産業廃棄物)として適切に運搬・処分されます。

費用の相場は、1平方メートルあたりおよそ10,000円〜80,000円程度です。
これには調査費用、除去作業、廃棄処理、行政対応に関する費用が含まれますが、建物の規模や立地、施工環境によって費用は前後します。
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

また、調査・分析費用は1サンプルあたり約30,000円が目安であり、対象範囲が広い場合は合計で10万円を超えることもあります。
費用負担はあるものの、無申告や未分析のまま工事を行えば、法令違反健康被害のリスクが高まりますので、慎重な対応が求められます。

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