エアコン工事にも石綿対応が必須|元請業者が知っておくべき違反防止の実務知識とアスベストONEの活用法
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エアコン設置・取り替え・移設などの電気工事は、一見すると小規模で安全性の高い作業と考えられがちですが、
築年数の古い建築物では、壁や天井に石綿(アスベスト)含有建材が使われている可能性があります。
特に2006年9月1日以前に着工された建物には、壁に穴を開けるだけでも石綿が飛散するリスクがあるため、元請業者としては事前調査や届出、適切な工事計画を策定する必要があります。
2023年の規制強化により、エアコン工事のような小規模な設備工事でも建築物石綿含有建材調査者等の有資格者による事前調査が原則必須とされるようになりました。
厚生労働省や環境省は注意喚起を強化し、大手量販店でも対応基準を統一する動きが進んでいます。
違反が発覚すれば行政処分や罰金、さらには顧客や協力会社との信頼関係にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、なぜエアコン工事において石綿対応が必要なのか、関連法令や過去の違反事例、調査義務の範囲、資格書類・掲示物の要件、
そして「アスベストONE」による効率的かつ確実な石綿対応の実務活用まで詳しく解説します。
なぜエアコン工事で石綿対応が必要なのか?
エアコン工事では壁や天井に穴をあける作業や、電動工具によるビス止め作業が伴うため、既存の建材に石綿が含まれていれば、穴あけやビス止めによって微細な石綿繊維が飛散する危険があります。
2023年10月1日の改正石綿障害予防規則、改正大気汚染防止法の施行により、小規模な工事でも建築物石綿含有建材調査者講習等の有資格者による石綿事前調査の実施が義務化されました。
たとえ直径数センチ程度の穴開けや数か所のビス止めでも、例外ではありません。
厚労省は石綿総合情報ポータルサイトで、エアコン取り付けやクロスの張り替えのような軽微な作業でも、石綿対応を徹底する必要があると注意喚起しています。
実際、大手家電量販店も法令改正に合わせてエアコン工事に有資格者による石綿調査を導入し、全現場で標準化を進めています。
厚労省の注意喚起と量販店の対応標準化
厚生労働省は、エアコン工事や壁穴あけを含む小規模工事に対しても、石綿有無の事前調査と必要な措置を講じるよう繰り返し呼びかけています。
大手量販店では、2023年10月1日の有資格者による石綿事前調査の義務化を契機として、自社内や協力会社内での有資格者の確保、有資格者による事前調査の標準化、これに伴う調査費用、石綿対応施工費用分のエアコン工事費の値上げなどを行い、webサイト等で公表しています。
過去の事例に見る石綿法令違反のリスク
過去、小規模の穴あけ工事で石綿の対応を怠った結果、大きな問題が生じたケースも報道されています。
2024年に新潟市で保育園への通信機器の設置のために天井板に小さな穴を開ける、という工事に際して、施工業者が十分な石綿対策を行わず、粉じんを飛散させた可能性があることが判明した事例があります。
その結果、市が保護者や従業員への説明会を開催せざるを得なくなり、当該業者は公共工事から指名停止処分になっただけではなく、損害賠償の協議にまで発展する事態となっています。
このように、小規模の穴あけ工事であっても十分な石綿法令対応を行わなければ大きな問題として行政処分、損害賠償、場合によっては刑事責任を問われることになりかねません。
エアコン工事に関しても、新潟市の通信機器設置工事と同様に小規模ながら壁への穴あけや電動工具によるビス止めが含まれており、相応のリスクがあることは間違いないといえます。
元請業者が守るべき石綿関連法令のポイント
元請業者は、石綿障害予防規則と大気汚染防止法に基づく調査・届出・作業計画・施工の責任主体となります。
2022年4月以降、調査結果の報告義務が明文化され、請負金額税込100万円以上の改修工事や解体面積80㎡以上の解体工事においては、
石綿の有無にかかわらず事前調査の結果を管轄の労働基準監督署及び自治体等の大気汚染防止法窓口に電子システム(石綿事前調査結果報告システム)を通じて報告する必要があります 。
また、調査の結果、施工範囲にレベル1や2の石綿含有建材があれば、工事着工の14日前までに管轄の労基署及び大気汚染防止法窓口への作業計画届や、特定粉じん排出等作業実施届の届出が必要となります。
2020年以降の事前調査に関する主要な法令改正とは?
まず2020年の大気汚染防止法及び石綿障害予防規則の改正を受けて、2021年4月から事前調査結果の3年間の保存が義務付けられました。
2022年には上記の通り一定規模以上の工事において調査結果の報告義務が追加されています。
さらに2023年10月からは工事の規模に関わらず、一部の例外を除いて建築物の解体・改修等工事には建築物石綿事前調査者等の有資格者による石綿事前調査が必須となりました。
対象となる工事と調査義務の範囲
エアコン工事では、設置・移設・取り外し、設置に伴う壁や天井に穴を開ける作業が対象です。
室外機設置のみや既存配管穴を利用する場合は調査不要と言われることも多いですが、新規の穴あけを伴わなかったとしても電動工具によるビス止めを行う場合には石綿が飛散する可能性があり、事前調査が必須となります。
なお、建築物の新築着工日が2006年9月1日より後であることが設計図書等で確認できる場合には、有資格者による現地での目視調査を行わなくとも書面調査のみで石綿なしと判断して良いこととされていますが、
その場合であっても書面調査の記録を3年間保管するとともに発注者にも書面で説明し、工事現場に調査結果を掲示することが必要となります。
レベル3石綿でも対応は必須
エアコン工事で扱う石綿含有建材は、主として飛散リスクが相対的に低いレベル3の石綿含有建材であるクロス、石膏ボード、サイディング、仕上塗材等が想定されます。
レベル3の石綿含有建材は、レベル1(吹付け材)やレベル2(保温材・耐火被覆材)と比べて飛散性が低く、作業基準の厳重さはこれらの建材ほどではないものの、
石綿含有建材がある、または有とみなして工事する場合には防じんマスクの着用や石綿作業主任者の選任、各種掲示物の掲示など法令が定める作業基準を順守した上で、
作業記録や作業完了報告を作成し、3年間(一部書類は40年間)保管しなければなりません。
石綿事前調査の実施と報告の実務フロー
石綿(アスベスト)事前調査は、建築物の改修や解体などの工事を実施する際に、法令に基づいて元請業者が必ず行わなければならない工程です。
一般的な建築物の解体・改修等工事では、第一に書面調査として、施工予定建物の設計図、仕上げ表、工事履歴、過去の調査報告などの資料を確認し、どの部位に調査が必要かを明確にします。
この際、施工対象の建物の新築着工日が2006年9月1日以降であることが書面から確認できる場合には、その時点で石綿含有建材はないと判断して差し支えないこととされています。
建築物の新築着工日が2006年9月1日より前である、または不明である場合には「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ者に調査を依頼し、現地調査を実施します。
現地調査では目視による調査の他、必要に応じて、建材の一部をサンプリングし、分析機関において分析調査を行います。
事前調査結果を踏まえて、工事内容や工程を調整し、石綿含有が判明した場合には、石綿作業主任者の選任、労働者への石綿特別教育の実施、防じんマスクの着用など作業基準を順守することが必要です。
なお、エアコン工事のような小規模、短期間の工事においては、事前調査において「みなし」の判断が行われる場合が珍しくありません。
「みなし」とは建材に石綿が含有するか否かが不明である場合に、分析調査を行わずに石綿があるとみなして工事を行うことです。
「みなし」を行うことによって分析調査を行う時間や分析調査費用を節約することができますが、当然、石綿含有が判明している場合と同様に法令の作業基準を順守することが必要になります。
資格・書類・掲示物|対応に必要な準備とは?
石綿事前調査および関連する作業においては、法令で定められた資格と書類、掲示物の整備が求められます。
まず、現地調査には「建築物石綿含有建材調査者」、除去等作業には「石綿作業主任者」の選任が必要です(2006年3月までに特定化学物質等作業主任者の資格を取得した者も選任可能)。
加えて、石綿が関与する作業を行う作業者には、特別教育を受講させる義務があります。
書類については、事前調査に関連する書類として石綿事前調査結果記録、発注者に対する事前調査結果の説明書、事前調査結果の掲示があり、これらの書類は石綿の有無に関わらず作成が必要なものとなります。
このうち、事前調査結果記録及び発注者への説明書は3年間の保管が義務付けられています。
さらに、事前調査によって石綿含有建材があることが判明した場合や、「みなし」で工事を行う場合には、
作業計画、協力業者への作業方法説明、各種の作業記録、作業完了報告などの書類が必要となり、作業記録及び作業完了報告は3年間(一部は40年間)の保管が義務付けられています。
なお、これらの書類の保存は紙媒体によるものだけではなく、PDF等の電子データによる記録でも差し支えないことが環境省のマニュアルで示されています。
これらの書類は工事の規模に関わらず必要であるため、エアコン工事やクロスの張り替えのような小規模な工事においても、書類の作成、保管、並びに掲示物の掲示は必須となります。
これらの準備が不十分であった場合、是正指導や罰則対象になるため、元請業者は徹底して対応すべきです。
元請業者が理解すべき2つの資格
アスベスト対策を適切に実施するためには、元請業者が「建築物石綿含有建材調査者(特定または一般)」と「石綿作業主任者」の2つの資格の役割と要件を理解することが不可欠です。
「建築物石綿含有建材調査者」は、工事前に建材のアスベスト含有有無を目視により判断するとともに、サンプル採取の必要性や採取箇所の判断などを行います。
調査者の選定は作業の信頼性を左右するため、法的要件を満たした者に限定されます。
一方、「石綿作業主任者」は、実際の除去作業において労働者を指揮し、作業手順の管理、安全確保、周囲への飛散防止措置の徹底を行う技術的責任者です。
両者の資格と責任は明確に分かれており、それぞれの役割を正しく理解し連携することで、法令遵守と安全な工事進行が実現されます。
石綿看板・作業記録の整備と保管
エアコンの工事を含め、解体・改修等の工事においては石綿の有無にかかわらず石綿事前調査結果の看板の掲示が義務付けられています。
看板は必ずA3以上の大きさであることが求められ、周辺住民・作業従事者の双方に見やすい場所に掲示する必要があります。
なお、石綿含有建材がある、または「みなし」での工事の場合には事前調査結果の掲示以外に、石綿に関係する作業の期間中は関係者以外立入禁止、石綿の引き起こす疾病や使用すべき保護具、石綿作業主任者の選任、飲食及び喫煙の禁止の看板を掲示する必要があります。
また、石綿含有建材がある、または「みなし」の工事において必須となる「作業記録」は、写真または動画による作業状況の記録、作業従事者ごとの記録、石綿作業の完了を建築物石綿含有建材調査者または石綿作業主任者が確認したことの記録を含みます。
これらの作業記録は3年間(作業従事者ごとの作業記録は40年間)保管が義務付けられています。
作業記録は労働基準監督官による立ち入り調査時に確認する対象となるため適正に作成し、保管することが極めて重要になります。
現場対応の実例とよくある誤解の整理
現場では「軽微な作業だから調査は不要」「新しい建物にはアスベストはない」といった誤解が見受けられます。
例えば、エアコン交換のための小さなビス打ちであっても、既存の建材に穿孔する場合は調査義務が生じます。
また、2006年9月1日以降に新築着工されたの建物であっても、そのことを書面で確認すること自体が事前調査に当たるため、事前調査結果記録の作成、発注者への書面による説明、事前調査結果の掲示は必須となります。
これらのリスクを見逃さないためには、元請業者が「既存の建材を損傷・除去するのであれば、原則としてすべての工事に対して調査が必要である」という大原則を認識することが重要です。
エアコンの設置工事、クロスの張り替え、通信機器の設置等、軽微な工事であっても「いちいちやってられないから」という理由で例外を作ることはできないのです。
石綿対応の手間を削減する「アスベストONE」の活用
「アスベストONE」は、元請業者が石綿対応を効率的に進めるためのクラウドサービスです。
石綿法令に関連して必要となる各種書類・掲示物の作成、写真保存、GビズIDによる電子報告などを一括管理でき、コンプライアンスの順守を徹底するとともに法令対応に関わる作業時間を大幅に短縮することが可能です。
分析依頼・看板出力・作業報告までワンストップ対応
アスベストONEでは、調査書類の作成以外に提携分析機関での分析調査もシステム内からワンストップで依頼可能です。
調査依頼フォームを入力するだけで分析依頼が完結し、全国一律の分析費用で即座に見積が提示されます。
資料送付用の送付書等もシステムから出力され、進捗確認や報告書出力システム内で一元管理できます。
GビズID対応を含む自動化の仕組み
請負金額税込100万円以上の改修工事等、事前調査結果報告の対象となる工事に関しては、アスベストONEで作成した調査結果を用いて行政への報告も簡単に行うことができます。
アスベストONEからは事前調査結果記録で入力した内容を行政の石綿事前調査結果報告システムに準拠した形式でCSV出力することが可能です。
後は、行政の石綿事前調査結果報告システムにGビズIDでログインし、アスベストONEからダウンロードしたCSVファイルをアップロードするだけで電子報告が簡単に行えます。
GビズIDの種別がプライムであれば、複数現場の電子報告も一括で行うことが可能です。
多数の現場を一括管理できるクラウド機能
数百件の現場でも、書面作成の進捗を一覧で管理でき、検索機能もあるため本社や支店から一元管理でき、報告漏れ防止・書類整備の簡略化・監査対応にも強みがあります。
また、元請業者単独による運用だけではなく協力業者と連携して運用することも可能であり、協力業者が事前調査記録や写真の入力、登録を行い、元請業者がその内容に基づいて行政報告や順法監査を行う、という運用も可能です。
違反を防ぎ、作業負担を減らすために
石綿対応に関する制度は今後も厳しくなる見込みです。
元請業者として、現場ごとの法令順守と効率化の両立を図るために、アスベストONEのようなツールの導入は強力な手段です。
今後のパトロールや立入検査強化に備える
行政による巡回指導や立入検査の強化が進む中、石綿対応の不備は指導対象となり得ます。
記録が整っていない、掲示物がない、協力会社教育が不十分などは違反となりかねません。
元請業者の義務と対応漏れの代償
対応漏れがあった場合、元請業者は行政処分、罰金、損害賠償、社会的信用喪失などのリスクに直面します。
特にGビズIDによる報告と記録の義務は厳守が求められるため、事前の体制整備が不可欠です。
法令順守と効率化の両立をアスベストONEで実現
エアコンなどの設備工事において、石綿対応は法令順守の観点からも実務効率の観点からも重要です。
元請業者として、調査から報告、看板設置、記録保管までをワンストップで対応できるクラウドツールを活用することで、安全で効率的な工事運営が可能になります。
社会的信頼と作業者の健康を守るためにも、石綿対応の実務体制を整備し、アスベストONEで実践しましょう。