アスベストのみなし工事とは?元請業者が理解すべき判断基準と対応の流れ
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アスベストみなし工事の概要
みなし判定は、石綿障害予防規則に基づいて認められている手法で、書面調査・目視調査を実施してもアスベストの有無が特定できない場合に選択できます。ただし、みなしと判断する場合は、吹付材であれば最も危険性の高い青石綿が含まれていると仮定して作業計画を立てるなど、最も厳しい安全基準に基づいた対策を取る必要があります。
一方で、みなし工事を選択したとしても、「書面調査」「目視調査」「調査結果報告書の作成」「発注者への説明」「現場への備え付け」「届出」といった義務は省略できません。これらを怠ると、行政指導や罰則の対象となるおそれがあります。特に、大気汚染防止法や労働安全衛生法では、調査結果の報告や現場掲示の不備に対して指導件数が増加しており、監督官庁による立ち入り調査も強化されています。
また、みなし判定を行った場合は、廃棄物処理の段階でも「特別管理産業廃棄物(レベル1・2)」または「石綿含有産業廃棄物(レベル3)」として扱う必要があります。除去や運搬、処分までを含めて厳格な管理が求められるため、結果的に分析を行った場合よりもコストが高くなることもあります。
つまり、みなし判定は「調査を省く」ための仕組みではなく、「安全側に立って厳重な対応を取る」ための選択肢です。誤った運用をすると行政処分や健康被害のリスクが生じるため、判断は慎重に行う必要があります。アスベスト含有が疑われる場合は、可能な限り分析機関で定性分析を行い、確実なデータに基づいた工事計画を立てることが望ましいです。
アスベストみなし工事が行われやすい建物の条件とは
「みなし工事」が行われやすい建物には、いくつかの共通した条件があります。
まず最も重要なのは建築年です。日本では1970年代から1990年頃まで、アスベストが断熱材や防音材、耐火材などとして広く使用されていました。特に、1975年以前に建設された建物はアスベストの使用可能性が高いとの統計データがあるため、アスベスト含有建材であると「みなし」て施工されやすい傾向にあります。。
次に挙げられるのが、設計図面や仕様書などの記録が欠如している建物です。工事に先立ってアスベスト調査を行う際、過去の設計図や材料表が残っていないと、使用された建材の種類が不明となり、アスベストの有無を判断するのが困難になります。このようなケースでは、安全性を確保するため、アスベスト含有を前提とした工事対応が求められます。
さらに、老朽化した建物や一部改修歴のある建物も対象になりやすいです。部分的に補修・改修が行われたことで、当初の使用建材と異なる材料が混在している場合、全体像の把握が難しくなります。このような不確実性が高い場合も、工事の判断が下されやすくなります。
総じて情報が不足し、アスベスト使用の可能性が高いと判断される建物では、みなし工事が行われる可能性が高まります。そのため、所有者や管理者は、記録の整備や早期の事前調査を通じて、無用なリスクを回避する取り組みが求められます。したがって、「みなし工事」が行われやすい建物では、法令を遵守した上で適切な判断を行うことが不可欠です。
アスベストみなし工事であれば事前調査は不要?
アスベスト(石綿)の「みなし判定」を行えば事前調査が不要になると誤解されることがありますが、これは正しくありません。みなし判定は、あくまで特定が困難な建材に対して分析調査を行わない場合の措置であり、書面調査や目視調査、結果報告といった手続きが不要になるわけではありません。
書面調査では、設計図書や仕様書を確認して使用された建材を特定します。続いて、目視調査で現地の施工状況を確認し、疑わしい箇所を把握します。この二つの調査を行ったうえで、アスベストの含有が明確でない場合にのみ、みなし判定が可能となります。また、みなし判定を行った場合でも、調査結果報告書を作成して発注者に説明し、現場に備え付けることが法律で義務付けられています。一定規模以上の工事では、石綿事前調査結果報告システムを通じて行政への届出も必要です。これらを怠ると行政指導や罰則の対象になることがあります。
さらに、みなし判定で工事を行う場合は、除去や廃棄においても最も厳しい安全基準が適用されます。たとえば、吹付材や保温材などはレベル1や2に該当し、特別管理産業廃棄物として処理しなければなりません。そのため、分析を省略しても全体のコストや作業負担が増える場合があります。
みなし工事を選択するのは、次のようなケースです。
一つ目は、工期が極めて短く、分析結果を待つ時間が確保できない場合です。たとえば緊急の修繕や災害対応などで即時着工が求められるときは、みなし判定が有効です。
二つ目は、建材の採取が困難な場所にある場合です。高所や危険箇所など、試料採取そのものが作業リスクを伴う場合には、分析を行わずに厳重な飛散防止措置を取る方法が選ばれます。
三つ目は、アスベスト含有の可能性が高いと推定される場合です。1970~1980年代に施工された建物や、吹付材・断熱材など過去にアスベストの使用例の多い建材が確認された場合は、分析を行わずにみなし判定とすることで、結果として工事全体のコストを削減することが可能です。
しかしながら、みなし工事では、分析を省略できる代わりに最も厳しい飛散防止措置が求められます。除去や廃棄物処理も「特別管理産業廃棄物」として扱われ、費用が増加することもあります。そのため、短期的な手間の削減だけで判断するのではなく、総合的なコストとリスクのバランスを考えることが重要です。
結論として、みなし工事は「分析を省くため」ではなく「安全を確実にするため」の選択肢です。建材の種類や工事内容を正確に把握し、有資格者による適切な調査のもとで判断することが、法令遵守と現場の安全確保の両立につながります。
アスベストみなし工事の具体的なフロー
最初の工程は書面調査です。建物の設計図書や仕様書、竣工図を確認し、アスベストが使用されている可能性がある箇所を特定します。発注者へのヒアリングも行い、改修履歴などを把握します。書類が残っていない場合は次の段階である現地調査に進みます。
続いて目視調査(現地調査)を実施します。現場で実際の建材の種類、施工状態、吹付材や保温材の有無を確認し、図面と照合してアスベスト含有の可能性を評価します。ここで「含有の有無が不明」となった建材について、分析調査を行うか、みなし判定を選択するかを判断します。
みなし判定を行う場合は、建材の年代や用途、リスクを総合的に評価します。1970~1980年代に施工された建築物や、吹付け材・断熱材・けい酸カルシウム板などが使われている場合は、含有の可能性が高いためみなし判定が適用されることが多いです。
一方で、木材やガラス、石など、明らかにアスベストを含まない素材のみで構成された建材は調査・報告ともに不要です。それ以外の建材では、メーカーの不含有証明で確認する行為も事前調査の一環であり、その結果は報告対象となります。
みなし工事を選択した場合は、最も厳しい安全対策を実施します。例えば、レベル1・2に相当する場合は作業エリアの密閉、負圧除じん装置の使用、防護具の着用などを徹底し、生じた廃棄物については特別管理産業廃棄物として専門業者に処理を委託します。工事後は清掃や残留確認も必要です。
最後に、調査結果報告書の作成と届出を行います。発注者への説明、現場での掲示、行政への届出を怠ると罰則の対象となるため注意が必要です。
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